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ごあいさつ

 

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本日ここに第28回全日本空手道選手権大会がかくも盛大に開催されます事は誠に同慶の至りであります。

本大会が28回を迎え、ますます発展の一途をたどり、多くの優秀な選手を育て、社会で貢献できる有数な人材を世に送り、日本国内はいうに及ばず、世界へと活躍の場を広げて、本大会の実績とし、伝統の基盤をうずたかく築きあげておりますことは、真の誇りとするところであります。

昨年6月、IOC総会においてWKF(世界空手連盟)が正規の承認団体として世界中に認知され、オリンピックへの夢は、また一段と近いものになりました。単なる武道、武術から発した空手道は、日本の伝統武道として、崇高な精神性を持つ空手道となって現在、日本の代表的文化となり得ました。そして現代競技規定を備えた質純度の高いスポーツへの道を歩み、楽しさや爽やかさを兼ね合せもって、世界に類をみない程の普及と発展を遂げてきました。今、160有余の国と地域の人々が空手道を愛好して、実にその人口は約4,000万人に登ろうとしており、オリンピック競技種目に入るべく資格には何ら遜色ありません。21世紀には早々には是非ともオリンピック競技正式種目として認可を得るべく鋭意努力を惜しまないものであります。

平生、私達は空手道を通じて人間育成、人格の陶冶を目標としていますが、そこにある基本的精神は礼儀であります。しかしながら毎日の生活の中で、しばしば忘れがちになるのも礼儀であります。道場やクラブ、練習場の中だけで意識的に礼儀を発揮することはすでに日常習慣的なことになっていても、他のところでは、なかなか礼儀をわきまえて行動することができないのが現実のようです。

年長者やお年よりを敬い、他の人に親切な気持ちで接し、若い人や幼少の子供達を大切に思うという、ごく自然な感情を素直に表現できたらどんなにか素晴らしいことでしょうか。空手道修養の中には、このような教えもたくさんあるはずであります。我々が垂範率先して、すべきことを見せてあげるということも修業する者の役目の一つに違いありません。そしてその心を必ずや次世代へ、空手道の真髄として伝えてゆくことも大きな役割と確信しています。

どうか本日出場される選手の皆さんは、この空手道の基本である"礼と節"を忘れることなく、一年間の練磨の結果を余すところなく発揮し、躍動美溢れる技を展開して、観客の皆さんに大いなる感動を与えてもらいたいと願います。

終りに本大会の開催にあたり、ご尽力いただきました日本武道館をはじめとする関係各位に対し、深甚なる感謝の意を表し、併せて、ご来場の皆様の益々のご健康とご発展を祈念申し上げましてご挨拶といたします。

 

財団法人全日本空手道連盟

会長 笹川堯

 

 

 

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