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例えばドイツのビオトープ、あれはひどい対策主義なんですよね。ほんとうは。アウトバーンをつくった。だから、池が壊れた。そこの生物を、こっちに移すというのが、単純に聞こえるビオトープですけれども、ただ、彼らは違っている。ドイツ国土の全部の生物分布図をきちんと持っていて、そこで何が失われたということを考えて、それが生きられる環境を見つけて、そっちへ移している。大変恐縮ですけれども、皆さんの学校の、あるいはお知り合いの学校で、ビオトープをつくろうとやって、池を掘って、ボウフラかなんかが沸いたり、トンボが少し増えたと言っている。こういうのはビオトープじゃないんですよね。ここのところのコンセプトだとか、あるいは目的だとか、そういうことをちゃんとしなければいけない。ところが、ドイツ、スイスからまた輸入して、宇多さんには申しわけないけれども、近自然工法とか、何とか自然工法とか、似せてつくるということが、言葉でも、ちょっとまずいんですね。やっぱり自然を大切にしようというコンセプトがある作業にしなければならないんですけれども、そこまで出てこないんで、これからの課題だと思います。

これからの課題は、今のここでわめいている人間ではなくて、次の次の世代ぐらいまでが、きちんとそれを伝えられる、それを感じることができる、それを発言して、世の中に打ち出していくことができる。そのことが大切な教育の、まさに使命ではないかと年寄りは思うわけです。

最後に、やはり川・水の問題を取り扱うと、最初からイントロダクションの話から出てきましたように、時間と空間、つまり歴史的な事柄というものが不可分であるということ。だから、歴史認識につながるし、地域の歴史だし、先ほど言われたように、東京湾のを食べていた。目黒のサンマがあるわけですから、サンマも取れていた。そんな話から、非常に広がりがある夢の多いテーマであると。それだけに不透明な、また扱いにくい問題も多いということなんですけれども、今日は皆さんからのお話も含めて伺ったのは、やはり住民参加、あるいは住民の人たちとのコンタクトが、この総合的な学習の時間を使うのに非常に有効な手段であると。そこには教科書にない地域住民の歴史。つまり庶民の歴史というのは、日本の歴史の中にないんです。歴史はすべて上位社会の歴史が歴史をつくっているわけです。日本は庶民の歴史を、これから皆さんが子供に伝えてつくっていくと。そういう大きな、物すごい大革命の時期じゃないでしょうか。

もう一つ、大革命といえば、新しい河川法、新しい海洋法、新しい森林法ができたのが、この二、三年なんですよね。まさに、このタイミングのいい、このテーマ。これを何とか−−もちろん、ほかの総合的な学習で扱いのテーマもお持ちでしょうけれども、これからお帰りになって、資料も渡してございますので、拙いものですけれども、それをもう一度ゆっくりお読みいただきまして、これからの検討の素材にしていただければと思います。

また勝手ですが、名簿を配らせていただきましたので、皆さん同士で、さっきの先生のところへ、どうやっているの?とか、私立はいいなとか、うちの校長は……なんて、そんなことは言ってはいけませんかね。(笑)いろいろと私も個人的に話は聞くんですが、そういう不満も含めて、やっぱり子供たちのために、そして地球自然のために、これからよろしく、こういうテーマに取り組んでいただければと思います。

 

 

 

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