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国内研究者の報告 1]

 

沿岸海域の環境管理のための政策と活動

 

 

上嶋英機

通産省工業技術院 中国工業技術研究所

海洋環境制御部長

 

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ただいまご紹介にあずかりました通産省中国工業技術研究所の海洋環境制御部長をしております上嶋でございます。よろしくお願いします。

今日は非常に格調の高いセミナーの講演会にお招き頂きまして有り難うございました。タイトルに見合うようなお話ができるかどうか非常に不安でございますけれども、私たちが今やっている研究所でのお話も含めまして、少し話題提供ということでお話ししたいと思います。

我々のところは瀬戸内海の環境の研究をこれまで29年間行って来ました。瀬戸内海が昭和40年代、非常に汚染されまして、昭和46年7月1日環境庁が設立したと同時に我が研究所もできました。その時代では、瀬戸内海における環境の政策あるいは技術的な課題、環境がいかに破壊されたかというような一つのプロセス、そういう問題に対してどこも研究するところがない状態でした。このため、日本の海洋関連のいろいろな研究者が集結し知恵をしぼりまして、我が研究所ができたという経緯がございます。通産省ですけれども、環境庁の一つのミッションとして10年ぐらい瀬戸内海の環境汚濁の問題をやってまいりました。現在、環境修復あるいは創造という研究のテーマをやっております。我が研究所では世界最大の水理模型である瀬戸内海大型水理模型があります。大きさは水平縮尺が2千分の1で、空間的な容積はだいたい球場が一つ入る大きさで、アメリカのサンフランシスコ・ベイの水理模型と大きさはだいたい同じぐらいです。この水理模型によって過去29年間実験をやって多くの成果を上げ、そして様々な政策にも貢献してきました。そして研究課題そのものの新しいステージも開発しているということでは、かなりまれなる存在ではないかと自負しております。

また、最近では環境修復技術を研究していますが、これは非常に大事なことなんですが、いろいろな政策を実行する上で、やはり技術が伴わないと、環境の管理あるいは修復等々ができないということで、現在、広島湾の一番環境の破壊された海田湾というところに海上実験室を設けまして、いろいろな技術をこの海域へ持ってきて、実際の海で使ってみて、それによっていかにその技術が良いか悪いかを判断します。海というのは、一つのところで成功しても、他では個性が違いますから使い分けなければいけません。すなわちいろいろな技術メニューをたくさん持っていなければいけないということで、いま生態的な修復技術と物理的な修復技術を含めて、多くの研究機関と連携してやっております。

 

 

 

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