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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年那審第42号
    件名
漁船第十八幸洋丸爆発事件

    事件区分
爆発事件
    言渡年月日
平成11年1月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

井上卓、東晴二、小金沢重充
    理事官
寺戸和夫

    受審人
A 職名:第十八幸洋丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
右舷側タンク破損、機関室右舷側後部壁、同壁周辺の電路等焼損、主機、発電機等濡損、経費の都合で廃船、修理業者が広範囲熱傷及び右耳聴覚障害を負って長期間の入院加療

    原因
燃料油タンクを修理する際の安全管理不十分

    主文
本件爆発は、第十八幸洋丸が、燃料油タンクを修理する際の安全管理が十分でなかったことによって発生したものである。
沖修理業者が、可燃性ガスによるタンク爆発の危険性に対する配慮が十分でなかったことは、本件発生の原因となる。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年2月6日15時20分
沖縄県那覇市泊漁港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八幸洋丸
総トン数 19.76トン
登録長 16.15メートル
幅 3.60メートル
深さ 1.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 253キロワット
3 事実の経過
第十八幸洋丸は、昭和49年12月に進水した一層甲板型のFRP製漁船で、上甲板下が、船首から順に、3区画の魚倉、機関室、船員室及び倉庫となっており、機関室中央に主機を、同機の右舷側に前方より主機駆動発電機、雑用水ポンプ、右舷側燃料油タンクを、主機の左舷側に前方より原動機付発電機、左舷側燃料油タンクをそれぞれ装備していた。
機関室の右舷側燃料油タンクは、船首尾方長さ約3.3メートル高さ約2.2メートル幅約1.1メートル容量約6.5キロリットルのFRP製で、タンク内部のほぼ中央部に、船横方にFRP製の仕切板を取付けて前部タンクと後部タンクに分け、前部及び後部タンクの左舷側壁中央に、縦50センチメートル横40センチメートルの楕円形のマンホールを1個ずう設けていた。マンホール下部からタンク底面までの高さは76センチメートルであった。
A受審人は、昭和60年7月中古の本船を購入し、船長として乗り組み、沖縄県泊漁港を基地として、甲板員4人を乗り組ませて、はまだい等の一本釣り漁業に従事していたところ、いつしか、右舷側燃料油タンクの仕切板が左舷側壁との取付け部から剥(はく)離し、船体が動揺する度に燃料油が前部タンクと後部タンクを移動するようになり、このことを認めた同人は、平成10年1月28日同漁港に入港し、水揚げしたのち、B指定海難関係人に右舷側燃料油タンクの修理工事、船橋のドアの修理工事等を行わせる目的で、同月31日那覇新港船だまり防波堤灯台から真方位143度400メートルの地点において、同漁港東側岸壁に船首を西に向けて船尾付け係留した。
A受審人は、翌2月1日タンクローリーを呼び、右舷側燃料油タンクの燃料油搭載口からホースを入れてA重油を吸引させて3.5キロリットルを陸揚げしたが、約1.2キロリットルが吸引できずに残っていたところ、同月3日来船したB指定海難関係人と工事の打合せを行い、同人と作業員1人の計2人で船橋等の修理工事を翌日から開始すること、同タンクの修理工事を同月6日09時より開始すること、残油の処理までは本船側で行うこと等を口頭で約束した。
その後、A受審人は、右舷側燃料油タンクの前部及び後部タンクのマンホールを開放しようとしたところ、マンホールカバーを取付けたナットの数個が容易に緩まなかったことから、タンク修理工事の当日にB指定海難関係人にマンホールの開放も行わせることにした。
ところで、B指定海難関係人は、長年船大工として木造漁船及びFRP製漁船の建造等に携わっていたもので、作業員を1人雇って、沖修理も請け負って木工等の工事を行っていたところ、第十八幸洋丸の乗組員の1人と顔見知りとなり、同船の工事を請け負ったが、燃料油タンクの修理工事は初めてのことであった。
同月6日朝A受審人は、他の乗組員全員に休暇を与えていたので、1人機関室に入り、発電機原動機を始動して船内電源を確保し、移動灯を点灯してタンク付近に吊(つ)り下げた。
移動灯は、ガード及びグロープのない、100ワットの裸電球が取り付けられたものであった。
09時ごろB指定海難関係人は、その作業員1人とともにベルトサンダ、ディスクグラインダ及び集塵(じん)機の電動工具等を持って来船し、右舷側燃料油タンクのマンホールを開放したところ、タンク内部に燃料油が膝(ひざ)付近に達する量が残っており、本船側で残油の処理を行っていないことを知った。
そこで、B指定海難関係人は、ホース等を使って燃料油を機関室ビルジだまりに落としたものの、タンク内の換気が十分でないことを認めたが、タンク内での作業を中止しなかったばかりか、タンクの近くにあった裸電球を後部タンクのマンホールカバー取付け用の植込みボルトに移動灯のコードをかけてタンク内の照明として使用するという危険な状態で作業を開始し、集塵機のホースをタンク内に入れて船外に排気しながら、タンク内に入ってウエスで壁に残った燃料油等を拭(ふ)き取った。
A受審人は、ときどき作業の状況を見て、裸電球でタンク内を照明しているのを認めたが、業者に任せておけばよいと思い、タンク内の換気が十分に行われているかどうかを確認すること、裸電球などの火気を近づけないことなど、可燃性ガスの発生しやすい場所での作業に対する安全管理を行わなかった。
ところで集塵機は、株式会社マキタ電機製作所が製造したモデル410型と称する木工用集塵機で、吹出し口に集塵のための袋を取り付け、吸込み口に直径約8センチメートル長さ約4メートルのビニール製ホースを取り付けて使用されていた。また、ベルトサンダ及びディスクグラインダは、いずれも交流整流子電動機を使用したブラシの部分が外気に開放されたもので、可燃性ガスの近くでは使用できない器具であった。
13時ごろB指定海難関係人は、前部タンクに入り、ベルトサンダとディスクグラインダを使って仕切板とタンク壁との剥離部分を削り、FRP補修の準備作業を行い、14時45分ごろ終了した。
15時00分B指定海難関係人は、後部タンクに入ったとき、タンク内の燃料油の臭いが強く、このときも換気が十分に行われていないことが分かったが、大丈夫だろうと思い、仕切板と左舷側壁の剥離部分を右手に持ったベルトサンダで削りながら、左手で集塵機のホースの先端を持ち、削り屑(くず)を吸引していたところ、裸電球がマンホールの側壁と接触するなどして破損し、内部のフィラメントが空気中の酸素によって発火し、15時20分前示係留地点において、タンク底部に残留していた可燃性ガスが引火し爆発した。
当時、天候は曇で風はほとんどなく、漁港内の海面は穏やかであった。
B指定海難関係人は背後から爆風と火炎をかぶり、衣服等が燃えだしたので、マンホールから出て機関室に駆け上がり、海中に飛び込んで火を消し、その後同漁港市場の職員の手配により出動した救急車で病院に収容された。
A受審人は、機関室に駆け込み、沖修理の作業員とともに消火に当たっていたところ、到着した消防車等7台によって消火された。
その結果、右舷側タンクが破損したほか、機関室右舷側後部壁、同壁周辺の電路、始動器、同室天井、同天井の電路、船員室等が焼損し、主機、発電機、雑用水ポンプの電動機等の濡(ぬれ)損を生じたが、経費の都合で廃船とされた。
B指定海難関係人は、33パーセントの広範囲熱傷及び右耳聴覚障害を負って4箇月間を超える長期間の入院加療を要した。

(原因に対する考察)
本件は、総トン数19.76トンのFRP製漁船が、機関室右舷側に装備した容量約6.5キロリットルのFRP製燃料油タンクの内部修理を沖修理業者に行わせた際、同業者が残っていたA重油の残油を排出してウエスで内部を拭き取った後、裸電球をマンホールに吊り下げ、ベルトサンダで修理部分のFRPを削り、集塵機の先に付けた直径約8センチメートルのホースで削り屑を吸い取っていたときに、タンク下部の残留ガスが引火したものである。
以上の状況を踏まえ、本件の原因について考察する。
1 タンク内の換気
本件は、燃料油が入っていたタンクのマンホールを開放してから本件発生まで6時間ばかり経過したときに発生したもので、換気は自然換気のほかに、B指定海難関係人が手に持った集塵機のホースでFRPの削り屑を吸引すると同時に手元付近の空気を吸引していたが、タンク底面からマンホールの下部までの高さに可燃性ガスが相当量残留していたと考えられる。
2 火源となった器具等
本件時同業者がタンク内に持ち込んでいたのは、持参したベルトサンダ、集塵機のホース、本船にあった裸電球の移動灯であるが、次の供述等から裸電球が火源となったと認める。
(1) 「機関室の入口から作業の様子を見ていたらマンホールの所に下がっていた電球がボンと破裂したのを見た。」(A受審人の当廷における供述)
(2) 「後部タンク内でしゃがんだ姿勢で仕切板と左舷側壁の剥離部分を、右手に持ったベルトサンダで削り、左手に持った集塵機のホースで削り屑を吸わせる作業をしていたとき、背後でボンという音がして爆風と炎を背中に浴びた。」(B指定海難関係人の当廷における供述)
(3) 「タンクの外に置かれていた集塵機は火災による損傷がなかった。」(検査調書中の記載)
3 裸電球からの発火の状況
点灯中の裸電球は、同電球が壁部と接触するとかして破損し、内部のフィラメントが空気中の酸素によって発火したと判断する。しかしながら、電球の破損した原因については特定できない。
4 A受審人の所為
B指定海難関係人が裸電球の移動灯をマンホールに吊るしタンクに残った燃料油等をウエスで拭き取ったあと、すぐに工事を始めたことをA受審人が認めていた点を考えると、同人がタンク内換気が十分でないと考えることは可能であったと判断する。にもかかわらず、裸電球などの火気の使用を禁止するなどしなかったことは、可燃性ガスの発生しやすい場所での作業に対する安全管理を十分に行ったとは認められず、本件発生の原因となる。
5 B指定海難関係人の所為
同人の所為は、燃料タンクの修理が初めての経験であったとしても、可燃性ガスの危険性について十分配慮しなかったことは明らかで、本件発生の原因となるものである。

(原因)
本件爆発は、機関室右舷側のFRP製燃料油タンクを修理する際、燃料油のA重油がガス化して残留するおそれがあったから、タンク内の換気が十分に行われているかどうかを確認すること、裸電球などの火気を近づけないことなど、可燃性ガスの発生しやすい場所での作業に対する安全管理が不十分で、換気が十分行われていないタンク内で、沖修理業者が仕切板と左舷側壁の剥離部分にベルトサンダを掛けていたとき、同電球が壁部に接触するなどして破損し、電球内のフィラメントが発火し、可燃性ガスが引火したことによって発生したものである。
沖修理業者が、可燃性ガスによるタンク爆発の危険性に対する配慮が不十分で、換気が十分でないタンク内での工事を中止しなかったばかりか、裸電球を使用して作業を行ったことは本件発生の原因となる。

(受審人等の所為)
A受審人は、A重油の入った機関室右舷側のFRP製燃料油タンクを沖修理業者に行わせる場合、タンク内に残留していたA重油のガス化した可燃性ガスが引火すると爆発などのおそれがあったから、タンク内の換気が十分に行われているかどうかを確認すること、裸電球などの火気を近づけないことなど、可燃性ガスの発生しやすい場所での作業に対する安全管理を十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、沖修理業者に任せておけばよいと思い、可燃性ガスの発生しやすい場所での作業に対する安全管理を十分に行わなかった職務上の過失により、同業者がタンク内工事を実施中、可燃性ガスによるタンクの爆発を招き、同タンクの破損、機関室後部壁、同室天井、電路、始動器、船員室等の焼損及び機関室の主機、発電機、雑用水ポンプの電動機等の濡損を生じさせ、同業者に長期間の入院加療が必要な広範囲熱傷、右耳聴覚障害を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人が、機関室右舷側のFRP製燃料油タンクの修理作業を実施する際、換気が十分でないのを認めたとき、可燃性ガスによるタンク爆発の危険性に対して十分配慮せず、作業を中止しなかったばかりか、作業用の照明として裸電球を使用したことは、本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては、可燃性ガスによるタンク爆発の危険性に対する配慮が不十分であった点を深く反省し、その後、留意している点に徴し、勧告しない。

よって主文のとおり裁決する。






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更新日: 2019年10月19日

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