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1999年(平成11年)

平成10年神審第110号
    件名
プレジャーボートしらさぎII転覆事件

    事件区分
転覆事件
    言渡年月日
平成11年8月31日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

須貝壽榮、工藤民雄、西林眞
    理事官
平野浩三

    受審人
A 職名:しらさぎII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
全損

    原因
気象・海象に対する配慮不十分(波の発生状況の監視不十分)

    主文
本件転覆は、波の発生状況の監視が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年8月15日09時15分
若狭湾
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートしらさぎII
全長 5.94メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 29キロワット
3 事実の経過
しらさぎIIは、無甲板の船外機付FRP製プレジャーモーターボートで、A受審人が1人で乗り組み、知人2人を乗せ、魚釣りの目的で、船首尾とも0.3メートルの喫水をもって、平成9年8月15日08時45分京都府北部の博奕岬灯台から212度(真方位、以下同じ。)6.6海里に位置する、由良川の河口から4.5海里上流左岸の係留地を発し、河口0.5海里沖合の釣り場に向かった。
ところで、由良川は、若狭湾西部の栗田湾に注いでいる川で、河口が東西に延びる砂浜海岸に開けており、河口の500メートル上流に架かっている由良川橋梁付近は川幅が400メートル余りであるが、当時、河口では両岸から低く堆積した砂によって50メートルに狭められ、しらさぎIIくらいの大きさのモーターボートが通航することのできる、可航幅5メートル水深1メートルの水路が北向きにできていた。
A受審人は、半年前から河口沖合において10回ばかり釣りを行っていて、河口付近は遠浅で、北寄りの風が吹けば、磯波が立ちやすいことを知っており、あらかじめ、当日の天気予報により、注意報が出ていないこと及び若狭湾西部において波高が1.5ないし2メートルとなる旨の情報を電話で入手して発航したものであった。
こうしてA受審人は、船体中央部の船尾寄りに設けられた操縦席に腰を掛けて操船に当たって由良川を下航し、09時12分由良川橋梁の下を通過したとき、これまで16.0ノットの全速力前進にかけていた機関を半速力に減速し、同時12分少し過ぎ博奕岬灯台から231度3.4海里の、河口から400メートル上流の地点で、河口の中央に向けて針路を012度に定め、8.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
09時13分A受審人は、河口の150メートル手前に差し掛かったとき、河口の川筋にはあまり立っていなかったが、その両側沖合には波高2メートルばかりの波が立っているのを認めたが、一べつしただけでこの程度の波であれば大丈夫と思い、速やかに行き脚を止め、波を乗り切ることができるかどうかを判断できるよう、波の発生状況を十分監視することなく、そのまま続航した。
A受審人は、09時14分河口を通過中、次第に波が高くなり、引き返そうと考えたが、可航幅が狭くて回頭できないでいるうち、河口から50メートル沖合で波が一層高まった海域に至り、連続した波を受けて船体が大きく動揺したので、波を乗り切るのが困難と判断し、反転するために右舵一杯として回頭中、09時15分博奕岬灯台から233度3.1海里の地点において、しらさぎIIは、船首がほぼ057度を向いたとき、左舷側から高起した波を受けて船体が持ち上げられ、右舷側に大傾斜して転覆した。
当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、付近には磯波が立っており、潮候は上げ潮の末期であった。
転覆の結果、A受審人及び同乗者全員が海中に投げ出されたが他船によって救助され、また、船体は、現場から曳航の途中に損傷を生じ、廃船となった。

(原因)
本件転覆は、由良川の上流から河口沖合の釣り場に向けて下航中、波の発生状況の監視が不十分で、河口沖合において、高起した波を受けて船体が持ち上げられ右舷側に大傾斜したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、由良川の上流から河口沖合の釣り場に向けて下航中、河口の手前に差し掛かり、河口沖合に波高2メートルばかりの波が立っているのを認めた場合、波を乗り切ることができるかどうかを判断できるよう、波の発生状況の監視を十分行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、一べつしただけでこの程度の波であれば大丈夫と思い、波の発生状況の監視を十分行わなかった職務上の過失により、河口沖合を続航中、高起した波を受けて船体が持ち上げられ、右舷側に転覆させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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