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1999年(平成11年)

平成11年那審第12号
    件名
プレジャーボート一光丸転覆事件

    事件区分
転覆事件
    言渡年月日
平成11年9月30日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
道前洋志

    受審人
A 職名:一光丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船外機を濡損

    原因
気象・海象に対する配慮不十分(いそ波)

    主文
本件転覆は、いそ波に対する配慮が不十分で、いそ波の発生する海域への発航を中止しなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年10月25日09時40分
鹿児島県大島郡和泊町伊延港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート一光丸
全長 4.56メートル
幅 1.35メートル
深さ 0.59メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 7キロワット
3 事実の経過
一光丸は、FRP製プレジャーボートで、A受審人1人が乗り組み、知人2人を乗せ、魚釣りに行く目的をもって、平成10年10月25日09時15分鹿児島県大島郡和泊町伊延港で、発航準備を始めた。
ところで、A受審人は、釣りに行くときは伊延港から発航していたので、同港出入口の水路が、防波堤(北)北東端から北北西方向に幅30メートル長さ110メートルにわたって掘り下げられており、水深が急に浅くなって2.4メートル以下であることから、北寄りの風が強いときにはいそ波が高起する危険な海域であったことを知っていた。
A受審人は、発航準備中、伊延港沖には2ないし3メートルの波浪があり、同港出入口水路にいそ波が発生しているのを認めたが、波が低いときに水路を航行すれば大丈夫と思い、いそ波に配慮して発航を中止することなく、同港沖合防波堤の釣り場へ向かうこととし、船首0.0メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、09時30分伊延港導灯(前灯)から343度(真方位、以下同じ。)95メートルの岸壁を発した。
A受審人は、水路を出た後、波浪が高いので引き返すこととし、09時38分少し過ぎ伊延港導灯(前灯)から331度290メートルの地点で、針路を151度に定めて機関を2.0ノットの対地速力にかけ、うねりを船尾から受けて進行中、09時40分伊延港導灯(前灯)から331度180メートルの地点において、船体が波頭に乗って操縦不能となり、一光丸の船首が左に振られてほぼ北東に向いたとき、右舷側に大傾斜して転覆した。
当時、天候は曇で風力5の北東風が吹き、潮候は高潮期であった。
転覆の結果、A受審人と知人は、全員が海中に投げ出されたが本船に泳ぎついて船底に乗り、陸上からの救援によって救助され、船外機を濡損した。

(原因)
本件転覆は、鹿児島県大島郡和泊町伊延港において、発航準備中、同港出入口水路にいそ波が発生しているのを認めた際、いそ波に対する配慮が不十分で、発航を中止することなく、いそ波発生海域を進行してブローチング現象が生じたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、鹿児島県大島郡和泊町伊延港において、発航準備中、同港出入口水路にいそ波が発生しているのを認めた場合、北寄りの風が強いときにはいそ波が高起する危険な海域であることを知っていたのであるから、発航中止の措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、波が低いときに水路を航行すれば大丈夫と思い、発航中止の措置をとらなかった職務上の過失により、水路を進行中にブローチング現象が生じて転覆を招き、機関を濡損させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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