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1999年(平成11年)

平成10年門審第126号
    件名
プレジャーボート光貞丸転覆事件〔簡易〕

    事件区分
転覆事件
    言渡年月日
平成11年3月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

西山烝一
    理事官
副理事官 新川政明

    受審人
A 職名:光貞丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船外機が脱落して紛失

    原因
気象・海象(波浪の危険性)に対する配慮不十分

    主文
本件転覆は、波浪の危険性に対する配慮が不十分で、早期に帰航しなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実〉
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月9日08時35分
福岡県狩尾鼻北方沖合
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート光貞丸
全長 3.08メートル
幅 1.12メートル
深さ 0.40メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 3キロワット
3 事実の経過
光貞丸は、リョービ株式会社製のGEB-30型と称する、重量約38キログラムで定員2人乗りの船外機付きポリエチレン製プレジャーボートで、A受審人が同船を乗用車に載せて福岡県柏原漁港に運び、同受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.14メートル船尾0.29メートルの喫水をもって、平成10年8月9日05時30分同港を発し、同県狩尾鼻西方沖合の釣り場に向かった。
A受審人は、05時50分同釣り場に着き、魚釣りを始めたが釣果がなかったので07時30分狩尾鼻の北方沖合に向け同釣り場を離れ、同時4分柏原港西防波堤灯台から013度(真方位、以下同じ。)900メートルの釣り場に至り、3.2キログラムの錨を右舷船尾から投じ、直径約25ミリメートルの合成繊維製の錨索を15メートル延出して船首を北東方に向けて錨泊し、自らは船尾部で、同乗者が船首部でそれぞれ釣り竿を用いて魚釣りを開始した。
ところで、光貞丸は、一体成型のモノコック船体で沈みにくい構造となっていたものの、小型で乾舷が小さく無甲板の船型であることから、波浪が高まると船内に海水が打ち込み易い状況となり、波浪が大量に打ち込み始めると、短時間で水船状態になるおそれがあった。
08時ごろからA受審人は、波浪が高まり船尾から海水が打ち込む状況となったのを認めたが波浪の危険性に対する配慮が不十分で、これぐらいの波高ならまだ大丈夫と思い、早期に帰航することなく、魚釣りを続けた。
08時20分ごろ更に波浪が高まって波高が1.5メートルとなり、A受審人は、波浪が船内に度々打ち込むようになったことや周囲で魚釣りをしていた3隻の釣り船が帰航し始めたのを認め、ようやく帰航することとし、錨を揚げ始めたところ海底に引っかかって揚がらなかったので、錨索を切断することにしたが、はさみしか持ち合わせておらず同乗者と一緒に右舷側を向いて船底に座った姿勢のまま、はさみを使って錨索を切り始めたがこれに手間取っているうち、波浪が次から次へと船内に打ち込み、舷縁まで海水が進入して水船状態となり、08時35分前示錨泊地点において、光貞丸は、復原力を喪失し、船首を046度に向けて右舷側に転覆した。
当時、天候は晴で風力3の南南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、付近には波高約1.5メートルの波浪があった。
転覆の結果、光貞丸は柏原漁港に引き付けられたが、船外機が脱落して紛失し、A受審人及び同乗者は海中に投げ出されたが付近の釣り船に救助された。

(原因)
本件転覆は、福岡県狩尾鼻北方沖合において、錨泊して遊漁中、波浪が高まり船内に打ち込むようになった際、波浪の危険性に対する配慮が不十分で、早期に帰航せず、波浪が船内に連続して打ち込み、水船状態となって復原力を喪失したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、福岡県狩尾鼻北方沖合において、錨泊して遊漁中、波浪が高まり船内に打ち込むようになったのを認めた場合、小型で乾舷が小さく無甲板の船型で、波浪が高まると船内に海水が打ち込み易く、水船状態になるおそれがあったから、早期に帰航すべき注意義務があった。しかるに、同人は、これぐらいの波高ならまだ大丈夫と思い、早期に帰航しなかった職務上の過失により、波浪が船内に打ち込むようになって帰航する際、錨を引き揚げることができずに錨索を切断することに手間取っているうち、水船状態となり、復原力を喪失して転覆を招き、船外機を紛失させるに至った。






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