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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年7月19日08時00分 沖縄県伊是名島東方沖合 2 船舶の要目 船種船名
作業船第八浪速丸 全長 12.90メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
128キロワット 3 事実の経過 第八浪速丸(以下「浪速丸」という。)は、潜水作業に従事するFRP製作業船で、A受審人1人が乗り組み、回航の目的で、船首0.3メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、平成10年7月19日06時40分沖縄県伊平屋島前泊港を発し、同県那覇港に向かった。 これよりさき、B指定海難関係人は、那覇港への回航にあたり、浪速丸の航行区域が限定沿海区域であることを知っていたものの、航行区域の条件を確認しなかったので、航行区域外を航行しなければならないことに気付かず、そのうえ、二級小型船舶操縦士免状を受有する海技従事者を乗り組ませる必要があったのに、このことにも気付かず、A受審人に単独で同船の回航を行うよう指示した。 ところで、浪速丸は、昭和60年7月に進水した漁船を平成9年7月有限会社Rが買取り、操舵室前方の甲板上に総重量約300キログラムのウインチ及びコンプレッサー等を増設し、潜水作業船として使用していたもので、船体中央部やや後よりから船尾方約2.5メートルの甲板上に操舵室を、同室直下に機関室を、機関室後部左舷側に容量200リットルの燃料タンク1個を設け、甲板下は、船首から順に3個の船倉とそれらの後部に左右に分かれた2個の魚倉と続き、その後部には機関室が区画されていた。3個の船倉のうち、中央のそれには倉口がなく、前後の船倉及び左右の魚倉にはそれぞれ倉口があり、その周囲にはコーミングが設けられ、各倉口はFRP製さぶたで閉鎖されるようになっていた。また、機関室前部上方には、甲板上高さ約45センチメートル(以下「センチ」という。)のところに中央及び両舷に開口部があり、中央部のそれは開閉できないようボルトで締め付けられ、両舷の開口部は縦約50センチ横約40センチで、さぶたにより閉鎖されるようになっていた。そして、甲板全周には甲板上高さ船首部で約50センチ中央部で約35センチのブルワークを巡らし、同ブルワーク船体中央部やや前よりの下端両舷に長さ10センチ幅2センチの排水口を各1個設け、甲板上に滞留した海水を船外に排出するようになっていた。 一方、A受審人は、これまで浪速丸を操船した経験から、航走中は速力を増すに従って左舷側への傾斜が増大し、左舷側の排水口から海水が甲板上に流入して滞留するものの、速力を減ずれば甲板上の滞留水が減少することを知っていた。 A受審人は、燃料タンクを満杯として発航し、07時05分伊平屋港東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)から067度1.9海里の地点で、針路を160度に定め、機関を全速力前進に掛けて18.0ノットの対地速力とし、左舷側に傾斜したまま手動操舵により進行した。 07時15分A受審人は、東防波堤灯台から118度2.9海里の地点に達したとき、右舷側からの風浪の影響を受け、更に左舷側への傾きが増加して甲板上に滞留する海水量が多いことに気付き、速力を12.0ノットに減じた。しかし、甲板上に滞留する海水量の増加が止まらなかったが、もっと速力を減ずれば大丈夫と思い、航海を中止して発航地に引き返すなどの荒天避難の措置をとらなかった。 A受審人は、07時18分さらに減速して6.0ノットとしたものの、甲板上に滞留する海水量の減少が見られなかったことから、同県伊是名島仲田港に避難することとし、同時24分東防波堤灯台から131度3.9海里の地点で、針路を208度に転じ、同時31分速力を4.0ノットに減じ、波が甲板上に打ち込むなか、甲板上に滞留する海水量が増加するまま、風浪に抗して進行した。 浪速丸は、甲板上に滞留した海水によりさぶたが外れて船倉及び魚倉内に海水が流入し船首が沈下したまま続航中、08時00分仲田港東防波堤灯台から064度1.3海里の地点において、波浪により機関室前部上方の開口部のさぶたが外れて同室に海水が流入し、浮力を喪失して沈没した。 当時、天候は曇で風力4の南西風が吹き、波高は1.5メートルであった。 沈没の結果、海中に逃れたA受審人は、別会社の作業船に救助され、浪速丸は、船体が発見されず、全損となった。
(原因) 本件沈没は、前泊港から那覇港に向け回航中、右舷側からの風浪の影響を受けて左舷への傾きが増加し、甲板上の滞留水が増加した際、荒天避難の措置がとられず、船倉及び魚倉内に海水が流入して船首が沈下し、波浪により機関室前部上方の開口部のさぶたが外れて、同室に海水が流入し、浮力を喪失したことによって発生したものである。
(受審人等の所為) A受審人は、前泊港から那覇港に向け回航中、右舷側からの風浪の影響を受けて左舷への傾きが噌加し、甲板上の滞留水が増加したことに気付き、平素は速力を減ずれば同滞留水が減少していたことを認職していたにもかかわらず、減速しても同滞留水の増加が止まらなかった場合、速やかに発航地に引き返すなどの荒天避難の措置をとるべき注意義務があった。ところが、同人は、もっと速力を減じて航行すれば大丈夫と思い、発航地に引き返すなどの荒天避難の措置をとらなかった職務上の過失により、より速力を減じて続航中、船倉及び魚倉内に海水を流入させて船首部を沈下させ、波浪により機関室前部上方の開口部のさぶたが外れて、同室に海水を流入させ、浮力を喪失して沈没を招き、全損となるに至らしめた。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。 B指定海難関係人の所為は、本件発生の原因とならないが、航行区域外を航行させること及び無資格の海技従事者に回航を命じることは、厳に慎まなければならない。
よって主文のとおり裁決する。 |