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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年長審第39号
    件名
漁船第拾七富栄丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年12月17日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

坂爪靖、安部雅生、原清澄
    理事官
畑中美秀

    受審人
A 職名:第拾七富栄丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
右舷船首部船底外板凹損、右舷ビルジキール損傷等

    原因
先導船との連絡不十分

    主文
本件乗揚は、先導船との連絡が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年7月1日10時40分
長崎県太郎ケ浦漁港西方沖合アイノ瀬
2 船舶の要目
船種船名 漁船第拾七富栄丸
総トン数 351トン
登録長 51.00メートル
幅 8.70メートル
深さ 4.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第拾七富栄丸(以下「富栄丸」という。)は、専ら活魚輸送に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、長崎県九十九島周辺海域で活魚を積込む目的で、平成9年6月27日08時20分三重県度会郡南勢町宿浦を発し、瀬戸内海の津田湾及び燧灘(ひうち)で錨泊して台風の通過を待ったのち、翌7月1日長崎県北松浦郡小佐々町矢岳浦入口で先導船に案内されて06時30分矢岳漁港西方1海里ばかりの下島南端付近の活魚養殖施設に至り、はまちの積込みを開始した。
ところで、A受審人は、活魚養殖施設のある海域は水路が狭くて複雑なことを十分に承知していたので、水路不案内な同海域に入航する際には、必ず事前に関係先に船舶電話をかけて場所を確かめたうえ、先導船を手配し、同海域入口から同船に追従して同施設に向かうようにしており、今回の積込みに当たっては、次の積込地は長崎県北松浦郡鹿町町であると聞いていた。

ところが、A受審人は、はまちの積込みに手間取っているうち、全長5.76メートル幅1.41メートル深さ0.60メートルの先導船が活魚買い付け業者1人を連れて自船に接舷し、同人を移乗させたのち、自船を先導しようと付近で待機しているのを認めたが、鹿町町の積込地を以前にも行って水路事情の分かっている鹿町漁港沖合の活魚養殖施設と思い込んでいたので、同船に追従することはあるまいと思い、同船に何ら連絡することなく、同船が麦島とイナイ島間の水路を経由して発航地の北北東1.3海里ばかりの太郎ケ浦漁港沖合の同施設に案内するつもりであったことも、同船の船長が携帯電話を所有していたものの、自船の船舶電話番号を知らなかったことにも気付かないまま、はまち約12トンを積込み、船首3.00メートル船尾5.30メートルの喫水をもって、10時00分矢岳漁港沖合の同施設を発した。
発航して間もなくA受審人は、右舷前方の麦島南方沖合を北上する先導船を認めたものの、特に気に留めないまま自ら手動操舵に当たり、同船と離れて機関を種々使用しながら4.5ノットの平均速力とし、同島南西方沖合を北上していたところ、自船の動向に疑念を抱いた先導船の船長から連絡を受けた鹿町町漁業協同組合により、同島北北西方沖合で同船に追従して太郎ケ浦漁港西方沖合の活魚養殖施設に向かうよう指示を受けた。
こうして、A受審人は、当初の予定と異なった進路で、初めて太郎ケ浦漁港西方沖合の活魚養殖施設に向かうこととなり、10時26分少し過ぎ割石鼻東方500メートルばかりの標高75メートルの山頂(以下「割石鼻東方山頂」という。)から306度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点に差しかかったとき、麦島北北西方560メートルばかりのところに待機中の先導船を認め、右転して同船に向首し、同時33分少し前割石鼻東方山頂から323度1.1海里の地点に達したとき、針路を146度に定め、乗組員2人を船首の見張りに就け、船首死角を補うため同船の後方200メートルばかりを同船に追従し、同島と戍(いん)島間の最小可航幅が40メートルばかりの狭い水路に向けて進行した。

10時37分少し過ぎA受審人は、割石鼻東方山頂から322度1,500メートルの地点に達したとき、先導船と同様に針路を左に転じたものの、同船の針路より少し右偏し、鹿町町漁業協同組合等がアイノ瀬に目印として設置した赤色の灯浮標を正船首少し右に見る123度の針路となり、同瀬北端に向首する状況となったことに気付かないまま続航した。
富栄丸は、アイノ瀬北端に向首接近する状況となって進行中、10時40分割石鼻東方山頂から329度1,130メートルの地点において、原針路、原速力のまま、同瀬北端に乗り揚げ、擦過した。
当時、天候は曇で風力3の西風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、視界は良好であった。
乗揚の結果、右舷船首部船底外板の凹損、右舷ビルジキールの損傷等を生じたが、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、活魚養殖施設が多数存在し、水路が狭く複雑な長崎県九十九島周辺海域において、活魚の積込みを終え、次の積込地に向けて発航するにあたり、先導船との連絡が不十分で、当初の予定と異なった狭い水路を航行し、アイノ瀬北端に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、活魚養殖施設が多数存在し、水路が狭く複雑な長崎県九十九島周辺海域において、矢岳漁港沖合での活魚の積込みを終え、次の積込地に向けて発航する場合、手配した先導船が付近で待機していたのであるから、次の積込地を間違えたり、針路を誤ったりすることのないよう、同船と連絡を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、次の積込地を以前にも行って水路事情の分かっている鹿町漁港沖合の活魚養殖施設と思い込んでいたので、先導船に追従することはあるまいと思い、同船と連絡を十分にとらなかった職務上の過失により、当初の予定と異なった狭い水路を航行してアイノ瀬北端への乗揚を招き、右舷船首部船底外板に凹損等を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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