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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年11月15日23時40分 沖縄県中城湾湾口ウフビシ 2 船舶の要目 船種船名
プレジャーボート千鳥丸 総トン数 2.6トン 登録長 9.90メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
88キロワット 3 事実の経過 千鳥丸は、磁気コンパスだけを備えたFRP製プレジャーボートで、A受審人1人が乗組み、友人2人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.1メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成10年11月15日14時30分金武中城港与那原湾の西原町兼久川川口の船だまりを発し、18時30分久高島東方沖の釣り場に至っていか釣りを行った。 20時30分A受審人は、東寄りの風波が強まったことから、津堅島灯台から113度(真方位、以下同じ。)14.0海里の地点を発進して帰途につき、中城湾の二ツ口を経て発航地に向かうこととし、針路を281度に定め、機関を全速力前進にかけると縦揺れが大きいので、半速力前進にかけて4.0ノットの対地速力で続航した。 ところで、A受審人は、久高島東方沖の釣り場から帰航する際、いつも金武中城港中城第1号灯浮標(以下「第1号灯浮標」という。)とウフビシ間の可航幅約400メートルの水路を航行していたことから、同水路の状況をよく知っており、夜間は第1号灯浮標の灯火の見え具合によって船位を見当づけていた。 23時10分A受審人は、津堅島灯台から144度4.3海里の地点に達したとき、第1号灯浮標の灯火を右舷船首17度1.9海里に認めたが、281度の針路が第1号灯浮標とウフビシ間の水路に向いていると思い、ウフビシに向首していることに気づかず、できるだけ第1号灯浮標に近づける安全な針路とすることなく進行した。 23時29分A受審人は、津堅島灯台から158度3.5海里の地点で、ウフビシに近すぎるように感じ、針路を291度に転じたところ、ウフビシ北端に向く状況となった。 千鳥丸は、同じ針路、速力で進行中、23時40分わずか前A受審人が前方に白波を認めて機関を中立とした直後、23時40分津堅島灯台から168度3.0海里の地点において、ウフビシ北端に乗り揚げた。 当時、天候は曇で風力4の東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。 乗揚の結果、船底に2箇所の破口を生じ、プロペラ翼2枚を曲損したが、自力で離礁し、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、夜間、久高島北東方沖において、釣り場から中城湾二ツ口を経由して帰航中、第1号灯浮標とウフビシ間の水路に向ける際、針路の選定が不適切で、ウフビシに向首する針路のまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、久高島北東方沖において、釣り場から中城湾二ツ口を経由して帰航中、第1号灯浮標とウフビシ間の水路に向ける場合、ウフビシから離すよう、できるだけ第1号灯浮標に近づける安全な針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、針路が水路に向いていると思い、できるだけ第1号灯浮標に近づける安全な針路を選定しなかった職務上の過失により、ウフビシに向首する針路で進行し、浅礁への乗揚を招き、船底に破口を生じさせ、プロペラ翼を損傷させるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |