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1999年(平成11年)

平成11年広審第38号
    件名
貨物船シリウスハイウェー乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年12月17日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

中谷啓二、杉崎忠志、黒岩貢
    理事官
田邉行夫

    受審人
    指定海難関係人

    損害
右舷船底部外板破口、凹損、バラストタンク浸水

    原因
釧路確認不十分

    主文
本件乗揚は、転針時の針路の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年10月28日22時51分
広島湾柱島水道
2 船舶の要目
船種船名 貨物船シリウスハイウェー
総トン数 44,576トン
全長 179.29メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 10,708キロワット
3 事実の経過
シリウスハイウェーは、船首船橋型の自動車運搬船で、A指定海難関係人ほか日本人船員3人及びフィリピン人船員19人が乗り組み、車両2,386台を積載し、船首7.44メートル船尾8.15メートルの喫水をもって、平成10年10月28日17時50分山口県三田尻中関港を発し、広島港に向かった。
A指定海難関係人は、出航操船に引き続き運航指揮を執り、クダコ水道を経由して広島湾に入り、22時41分柱島水道南口で西五番之砠灯標(以下「五番灯標」という。)から140度(真方位、以下同じ。)2.9海里の地点に達したとき、針路を290度に定め、機関を全速力前進にかけ、17.0ノットの対地速力で、三等航海士を見張りに、操舵手を手動操舵にそれぞれ当たらせ、推薦航路として海図に記載されている326度の針路線に向けて進行した。

22時43分A指定海難関係人は、五番灯標から148度2.5海里の地点で、船首前方に漁船の灯火を視認、同船を替わすため針路を270度に転じ、同時44分漁船を替わし終えたころ前示推薦航路近くに達したことを認め、転針して同航路に沿うため操舵手に右舵を令し右回頭中、同時45分少し過ぎ330度に向首して五番灯標の灯火を右舷船首約8度に視認したとき、ステディーを令した。
このときA指定海難関係人は、五番灯標の右方の水域には同灯標から南東方にかけて大五番之砠、エビガヒレなどの浅礁が連なって存在していることを知っていたが、停泊中多忙であったこと、久しぶりの休暇下船日を目前にして気持ちが高ぶっていたことなどから注意力が散漫になっていて、意図した針路に定められるものと思い、コンパス示度を確かめるなど330度の針路に定められたことを確認することなく、カーテンで仕切られた操舵室後部に入り、海図台に向かって三等航海士に広島港での予定錨地について説明を始めた。

22時45分半A指定海難関係人は、五番灯標から158度4,000メートルの地点に達したとき、操舵手による復唱がなされないまま針路が350度となり、同灯標南東方のエビガヒレに向首進行する態勢となったが、このことに気付かず続航中、同時50分半説明を終えカーテンの仕切りから出たとき、左舷前方に五番灯標の灯火を視認し、針路が誤っていることに気付き、あわてて左舵一杯を令したが及ばず、シリウスハイウェーは、22時51分五番灯標から130度1,300メートルの地点において、330度に向首して浅礁に乗り揚げ、これを擦過した。
当時、天候は曇で風力3の北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期にあたり、潮高は約190センチメートルであった。
乗揚の結果、右舷船底部外板に破口を伴う凹損を生じバラストタンクに浸水したが、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、夜間、広島湾柱島水道を北上中、転針時の針路の確認が不十分で、浅礁に向首進行したことによって発生したものである。


(指定海難関係人の所為)
A指定海難関係人が、夜間、広島湾柱島水道において、転針して回頭中、ステディーを令して針路を定める際、コンパス示度を確かめるなどして意図した針路に定められたことを確認しなかったことは、本件発生の原因となる。
A指定海難関係人に対しては、勧告しない。


よって主文のとおり裁決する。






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