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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年神審第14号
    件名
貨物船第八大洋丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年12月14日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

西田克史、工藤民雄、西林眞
    理事官
竹内伸二

    受審人
A 職名:第八大洋丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首船底外板に破口を伴う凹損、船首水槽に浸水

    原因
狭視界時、最狭部への進入を中止しなかった。

    主文
本件乗揚は、濃霧のため視界が著しく狭められた際、屈曲した狭い水路最狭部への進入を中止しなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年4月14日08時00分
徳島県撫養港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八大洋丸
総トン数 414トン
登録長 48.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 882キロワット
3 事実の経過
第八大洋丸(以下「大洋丸」という。)は、専ら香川県広島沖合での海砂の採取及び運搬に従事する砂利採取運搬船で、A受審人ほか5人が乗り組み、海砂750立方メートルを積み、船首4.2メートル船尾5.0メートルの喫水をもって、平成10年4月14日07時30分徳島県撫養港の公共岸壁を離れ、兵庫県津名港に向かった。
これより先、A受審人は、同日05時30分出航のため帰船した際、霧のため視程が50メートル以下であったので、出航を見合わせて視界の回復まで待機することとし、07時少し前テレビの気象情報によって徳島県全域に濃霧注意報が発表されていることを知ったが、それから間もなく、約1,300メートル東方の中瀬灯標が視認できるようになったことから出航したものであった。

ところで、撫養港は、鳴門海峡西口の徳島県大毛島と同県鳴門市との間の、北方から南方に延びる撫養ノ瀬戸の南口付近に位置し、暗岩が散在する中瀬と呼ばれる浅所とその南側の鳴門市の陸岸との間には水路が形成され、中瀬南端部に設けられた右舷標識を表示する中瀬灯漂付近は同水路最狭部となってV字状に屈曲しているうえ、その両側の5メートル等深線の幅員が約35メートルしかなく、通航に当たっては慎重な操船を必要とするところであった。
一方、A受審人は、撫養港には採取した海砂の水洗いのためほぼ連日のように出入りし、港内の通航には慣れていたが、以前、晴天の昼間にレーダーだけを頼りに水路最狭部の通航を何度か試みたものの、1度も通ることができなかったので、同水路を通航する際には、中瀬灯標を目標として目視しながら接近し、目測で左舷側約5メートルにこれを離すよう少し左舵をとって付け回すようにしていた。

離岸後、A受審人は、左舷錨の揚収を終えたところで、見張りとして船首部に3人、船尾部に2人の乗組員をそれぞれ配置し、引き続き自らは単独で出航操船に当たり、レーダーのレンジを0.75海里としていたものの、いつものように中瀬灯標を目視しながら、撫養ノ瀬戸のほぼ中央を東行した。
07時51分半A受審人は、撫養港1号突堤灯台から328度(真方位、以下同じ。)400メートルの地点に達したとき、針路を中瀬灯標のわずか右に向く122度に定め、機関を4.0ノットの微速力前進にかけ、折からの潮流に抗して2.5ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
07時55分A受審人は、撫養港1号突堤灯台北方沖合に差し掛かかり、前方の中瀬灯標までの距離が300メートルとなったとき、急速に濃い霧に包まれて視界が著しく狭められ、目視による船位確認が困難となったが、かすかに見える中瀬灯標の影を頼りに何とか通航できるものと思い、速やかは投錨仮泊するなど視界の回復まで水路最狭部への進入を中止することなく、同じ針路、速力のまま続航した。

こうして、A受審人は、濃霧により更に視界が狭められ、中瀬灯標が全く目視できない状況で進行していたところ、07時59分左舷側至近にふと黒い影を認めて同灯標に並航したものと思い、少し左舵をとって間もなく、船首見張り員からの「取舵一杯じゃ。」とのマイクの声に驚き、左舵一杯としたものの、このままでは中瀬に近寄りすぎるのではないかと不安を感じ、右舵に切り返しているうち、08時00分中瀬灯標から000度60メートルの浅所に、大洋丸は、左転中の船首が320度に向首したとき、ほぼ原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は霧で風力1の南風が吹き、潮候は上げ潮の初期に属し、付近には約1.5ノットの西流があり、視程は50メートル以下であった。
乗揚の結果、船首船底外板に破口を伴う凹損を生じ、船首水槽に浸水したが間もなく自力で離礁し、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、徳島県撫養港において、中瀬南側の屈曲した狭い水路最狭部に向かって接近中、濃い霧により著しく視界が狭められた際、視界の回復まで同最狭部への進入を中止することなく浅所に著しく接近したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、徳島県撫養港において、中瀬南側の屈曲した狭い水路最狭部に向かって接近中、濃い霧により著しく視界が狭められた場合、目視による船位確認が困難となったのであるから、速やかに投錨仮泊するなど視界の回復まで同最狭部への進入を中止すべき注意義務があった。しかるに、同人は、かすかに見える中瀬灯標の影を頼りに何とか通航できるものと思い、速やかに投錨仮泊するなど視界の回復まで水路最狭部への進入を中止しなかった職務上の過失により、浅所に著しく接近して乗揚を招き、船首船底外板に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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