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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年仙審第46号
    件名
漁船第三十一宝生丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年12月15日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

上野延之、長谷川峯清、内山欽郎
    理事官
黒田均

    受審人
A 職名:第三十一宝生丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底外板に破口、のち廃船

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年12月11日23時30分
岩手県久慈市東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三十一宝生丸
総トン数 4.9トン
全長 15.10メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 90
3 事実の経過
第三十一宝生丸(以下「宝生丸」という。)は、はえ縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.5メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、平成10年12月11日20時00分岩手県久喜漁港を発し、久慈牛島灯台(以下「牛島灯台」という。)北方4.8海里の漁場に向かった。
ところで、岩手県久慈市侍浜町字麦生地先沖には、さけ及びいわし定置漁業用の長島網と称する定置漁業権漁場(以下「長島網漁場」という。)が設定され、同漁場は、牛島灯台から348度(真方位、以下同じ。)670メートルの岩手県が定めた基点から082度380メートルの地点(ア点)、ア点から077度800メートルの地点(イ点)、イ点から174度390メートルの地点(ウ点)、ウ点から270度810メートルの地点(エ点)の各点を順に結ぶ線によって囲まれた水域で、イ及びウの各点に黄色灯火を備えた灯浮標が設置され、その水域内に定置網(以下「長島定置網」という。)が設置されていた。長島定置網は、胴網と垣網とで構成され、沖側にある胴網から西方に設置された垣網が長島網漁場の西端まで延びており、垣網西端に標識灯が取り付けられていた。

A受審人は、長島定置網の設置状況や同網の垣網西端北方約400メートルに下カイツナ礁と呼ばれる岩礁汲び同礁北方の海岸近くに多数の岩礁が散在していることを出漁時たびたびその付近を航行していたので十分知っており、平素、同垣網西端と久慈市沖長島との間を航過し、同垣網西端に並航したら右転して岩礁が散在する水域から離れる針路を選定して漁場に向かっていた。
A受審人は、発航から操船に当たり、20時30分牛島灯台南東方4.8海里の沖合に至り、漁場の到着時刻調整のために漂泊し、21時30分同沖合を発し、風が強かったことと甲板員を休ませるために少しでも船体の動揺を少なくしようとして海岸寄りを航行することとし、23時18分少し前牛島灯台から090度240メートルの地点で、針路を長島定置網の垣網西端を少し離す356度に定め、機関を微速力前進にかけ、2.8ノットの対地速力(以下「速力」という。)で自動操舵により進行した。

23時25分少し過ぎA受審人は、牛島灯台から017度670メートルの地点に達したとき、右舷正横60メートルのところに垣網西端の標識灯を認めたものの、平素は、速力18.0ノットで航行していたので、垣網西端に並航したら右転していたが、下カイツナ礁まで約400メートルの距離があるので、まだ余裕があると思い、右転して岩礁が散在する水域から離れる針路を選定することなく、その後下カイツナ礁に向首進行して同礁に著しく接近したが、このことに気付かないまま続航中、23時30分牛島灯台から009度1,060メートルの地点において、原針路、原速力のまま下カイツナ礁に乗り揚げた。
当時、天候は雪で風力5の北風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船底外板に破口を生じ、自力で離礁したのち付近の海岸に任意座礁し、その後廃船となった。


(原因)
本件乗揚は、夜間、久慈市東方沖合を航行する際、針路選定が不適切で、下カイツナ礁に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、久慈市東方沖合を航行する場合、岩礁が散在する水域から離れるよう、長島定置網の垣網西端に並航したら同水域から離れる針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、下カイツナ礁まで約400メートルの距離があるので、まだ余裕があると思い、同水域から離れる針路を選定しなかった職務上の過失により、下カイツナ礁に向首進行して同礁への乗揚を招き、船底外板に破口を生じさせて廃船に至らせた。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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