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1999年(平成11年)

平成11年仙審第59号
    件名
遊漁船第二十一えびす屋丸乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年12月14日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

高橋昭雄
    理事官
宮川尚一

    受審人
A 職名:第二十一えびす屋丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船尾船底外板及びキールに擦過傷、舵及び推進器に曲損等

    原因
針路保持不十分

    主文
本件乗揚は、針路の保持が十分に行われなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年6月13日06時05分
宮城県塩釜港塩釜区
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第二十一えびす屋丸
総トン数 10トン
全長 17.10メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 353キロワット
3 事実の経過
第二十一えびす屋丸は、手動操舵及びレーダーを装備したFRP製遊漁船で、A受審人が単独で乗り組み、釣り客18人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.6メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成11年6月13日05時50分塩釜漁港新浜地区岸壁を発し、花淵灯台から南南東12海里の塩釜港沖の釣り場に向かった。
ところで、R店は、遊漁業を営むために本船のほか4隻の遊漁船を運航していた。そして、A受審人は、長年休祭日に船長として本船などの各遊漁船に単独で乗り組んで釣り場の案内に当たり、GPSプロッターに記録した釣り場に至る航跡及び釣り場ポイントに基づいて操船に当たっていた。

離岸後、A受審人は、早速GPSを起動し、機関回転数を徐々に上げ、05時59分地蔵島灯台から266度(真方位、以下同じ。)0.9海里の地点で本船航路に入り、機関回転数を毎分1,700の全速力前進にかけて17.0ノットの速力で航路に沿って手動操舵により港外に向かった。
06時01分A受審人は、代ケ埼水道に差しかかったころ、前方1,000メートルの高遠島付近以東が霧に包まれた状況であることを認め、レーダーの電源を入れて全速力のまま航行した。
やがて、A受審人は、霧模様の高遠島付近でGPSプロッターに記録した航跡により釣り場に向かう予定の転針地点に達したことを確かめ、06時03分半地蔵島灯台から105度670メートルの地点で、本船航路から外れて目的の釣り場に向かうため針路を130度に定めて進行した。間もなく塩釜港第3号灯浮標を左舷側至近に航過して、同時04分地蔵島灯台から111度880メートルの地点で、予定の釣り場に向く140度の針路に転じた。その後、陸岸と白毛島や鍋島を含む周辺一帯の浅礁域との間の狭い水域を航行することになったが、機関回転数を毎分1,500に減じて作動したばかりのレーダーの感度等の調整を行っているうちに、これに気を取られ、コンパスによる針路の保持を十分に行わなかったので、徐々に左偏して白毛島周辺の浅礁域に向首するようになったことに気付かないまま続航中、06時05分地蔵島灯台から114度1,070メートルの地点において、105度を向首したとき、白毛島南西側浅礁にほぼ原速力で乗り揚げた。
当時、天候は霧で風力2の北東風が吹き、視程は100メートル弱で、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船尾船底外板及びキールに擦過傷、並びに舵及び推進器に曲損等を生じたが、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、塩釜港塩釜区において、航路から外れたのち、陸岸と浅礁域との間の狭い水域を経て釣り場に向かう際、針路の保持が不十分で、徐々に左偏して白毛島南西側浅礁域に向かって進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、塩釜港塩釜区において、航路から外れたのち、陸岸と浅礁域との間の狭い水域を経て釣り場に向けて手動操舵で航行する場合、偏向して浅礁域等に乗り入れることのないよう、コンパスによる針路の保持を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、作動したばかりのレーダーの感度等の調整に気を取られ、コンパスによる針路の保持を十分に行わなかった職務上の過失により、左偏して浅礁域に向かうようになったことに気付かないまま進行して、白毛島南西側浅礁への乗揚を招き、船尾船底外板及びキールに擦過傷、並びに舵及び推進器に曲損等を生じさせるに至った。






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