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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年11月26日05時45分 北海道春立漁港南東方沖合 2 船舶の要目 船種船名
漁船第八大成丸 総トン数 19トン 登録長 16.54メートル 機関の種類 ディーゼル機関 漁船法馬力数
130 3 事実の経過 第八大成丸(以下「大成丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、平成10年11月22日から北海道様似港を基地として、その西方の浦河港沖合漁場で夜間操業を続けていたが、同月24日の夜間操業で漁獲がなかったので基地を北海道函館港に移すこととし、翌25日04時00分様似港に帰港したのち、函館港に入港する時刻を調整するため同日夜半出航予定として停泊した。 ところで、A受審人は、様似港で出航待機中に休息をとろうとしたものの、航海準備などに追われて連続した休息時間がとれず、連日の夜間操業による疲労が畜積し、睡眠不足の状態になっていた。 こうして大成丸は、船首0.7メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、翌26日00時30分様似港を発し、南西方の津軽海峡東口に向け航行を開始した。 A受審人は、発航時から単独船橋当直に当たっていたところ、船首方からのうねりを受けて次第に縦揺れが強まってきたので、02時20分様似港の南西方11海里ばかりのところで、同港の近くまで引き返してから陸岸沿いに西行することにして同港に向け反転し、03時27分様似港外東防波堤灯台から234度(真方位、以下同じ。)2.3海里の地点に達したとき、針路を292度に定め、機関を全速力前進にかけ、8.5ノットの対地速力で自動操舵により進行した。 A受審人は、陸岸沿いに距離を2海里ばかり離して続航し、04時38分荻伏港南防波堤灯台から182度2.3海里の地点に達したとき、針路を春立港南外防波堤灯台に向く310度に転じ、その後周囲に他船が見当たらなかったことから操舵室の床に横になり、北海道三石郡三石町鳧舞(けりまい)の陸岸のレーダー距離が2海里になったら292度に転針する予定で操舵室後部の中央に設置したレーダーを見ているうち、蓄積した疲労と睡眠不足から次第に眠気を催した。しかし、同人は、間もなく転針しなければならないので居眠りすることはあるまいと思い、休息している甲板員を起こして2人当直とするなどの居眠り運航防止措置をとることなく当直を続けているうち、やがて居眠りに陥った。 こうして大成丸は、A受審人が居眠りに陥り、05時02分転針予定地点に達したが、居眠り運航により転針が行われないまま北海道春立漁港南方の海岸に向首したまま進行中、05時45分春立港南外防波堤灯台から120度1,400メートルの地点において、海岸付近の岩礁に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。 当時、天候は晴で風力3の西北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。 乗揚の結果、大成丸は、船首から中央部にかけて左舷側船底外板、ビルジキール及び魚群探知機送受波器に凹損を、推進器翼3枚に欠損を生じたが、春立漁港の同業船により引き降ろされ、同港に引き付けられたのち修理された。
(原因) 本件乗揚は、夜間、北海道様似港から北海道函館港に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、北海道春立漁港南東方の岩礁に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、単独船橋当直に当たって北海道様似港から北海道函館港に向けて航行中、蓄積した疲労と睡眠不足から眠気を覚えた場合、居眠り運航とならないよう、休息している甲板員を起こして2人当直とするなどの居眠り運航防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、間もなく転針しなければならないので居眠りすることはあるまいと思い、休息している甲板員を起こして2人当直とするなどの居眠り運航防止措置をとらなかった職務上の過失により、操舵室で横になったままレーダーを見ているうち居眠りに陥り、予定していた転針が行われず、北海道春立漁港南東方の岩礁に向首したまま進行して乗揚を招き、大成丸の船首から中央部にかけて左舷側船底外板、ビルジキール及び魚群探知機送受波器に凹損を、推進器翼3枚に欠損を 生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |