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1999年(平成11年)

平成11年那審第6号
    件名
旅客船うみえーる乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年11月30日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

清重隆彦
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:うみえーる船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
右舷推進器翼を曲損

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年5月2日15時45分
沖縄県西表島南東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 旅客船うみえーる
総トン数 19トン
全長 18.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 672キロワット
3 事実の経過
うみえーるは、2基2軸の軽合金製海中展望船で、A受審人ほか1人が乗り組み、運航者である有限会社Rの社員2人を乗せ、さんご礁海域調査の目的で、船首0.9メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、平成10年5月2日15時25分沖縄県西表島仲間港を発し、同港東方沖合のさんご礁に向かい、大原航路第21号立標(以下、立標の名称については「大原航路」を省略する。)周辺海域の調査を終えた。
そして、A受審人は、西表島南東岸の南風見埼沖合に拡延するさんご礁帯の調査を行うこととして発進し、15時41分第23号立標から308度(真方位、以下同じ。)650メートルの地点で、針路を300度に定め、機関を全速力前進に掛け、15.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行し、同時43分同さんご礁帯に接近するため左舵を取り、速力を4.0ノットに減じた。

A受審人は、15時44分第23号立標から275度440メートルの地点に達したとき、折からの太陽光線によって前方の海面が反射し、サングラスを使用していたもののさんご礁帯外縁付近に存在する浅礁を目視により確認することが困難であったが、さんご礁帯外縁付近の浅礁を十分に離す安全な針路とすることなく、浅礁に著しく接近する状況のまま、さんご礁帯外縁に沿うよう針路を222度とした。
うみえーるは、同じ針路及び速力で続航し、15時45分第23号立標から263度550メートルの地点で浅礁に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果、右舷推進器翼を曲損し、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、西表島南東方において、太陽光線によって前方の海面が反射し、サングラスを使用していたもののさんご礁帯外縁付近に存在する浅礁を目視により確認することが困難な状況のもと、さんご礁帯の調査を行う目的で航行する際、針路の選定が不適切で、さんご礁帯外縁付近の浅礁に著しく接近する状況のまま進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、西表島南東方において、太陽光線によって前方の海面が反射し、サングラスを使用していたもののさんご礁帯外縁付近に存在する浅礁を目視により確認することが困難な状況のもと、さんご礁帯の調査を行う目的で航行する場合、同浅礁を十分に離す安全な針路を選定すべき注意義務があった。ところが、同人は、さんご礁帯外縁付近に存在する浅礁を十分に離す安全な針路を選定しなかった職務上の過失により、同浅礁に著しく接近してこれに乗り揚げ、右舷推進器翼を曲損させるに至った。






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