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1999年(平成11年)

平成11年門審第46号
    件名
プレジャーボートスコール―?世乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年11月4日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

供田仁男
    理事官
新川政明

    受審人
A 職名:スコール―?世船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底外板擦過傷、推進器翼曲損、その後廃船処理

    原因
守錨当直不履行

    主文
本件乗揚は、守錨当直が行われなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年7月11日11時55分
福岡県糸島半島西岸
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートスコール―?世
全長 7.97メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 102キロワット
3 事実の経過
スコール―?世(以下「スコール」という。)は、船内機を装備したFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人5人を同乗させ、海水浴場に赴く目的で、船首0.7メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成10年7月11日09時30分福岡県博多港第4区の係留地を発し、玄界灘に面した同県糸島半島西岸に向かった。
A受審人は、折から日本海にある前線の影響を受けて大気の状態が不安定で、玄界灘では北西の強い風と高い波浪があるなか、糸島半島西岸沿いに南下するにつれて船体の横揺れが激しさを増してきたので、最寄りの海岸に寄せることとし、11時00分筑前西浦港沖防波堤灯台から224度(真方位、以下同じ。)1.20海里の地点において、水深6.5メートルの海底に重さ5.5キログラムのダンホース型錨を投じ、船首から合成繊維製錨索を30メートル延出して錨泊した。

錨泊したときA受審人は、錨泊地点が強い風と高い波浪にさらされ、風下の海岸まで200メートルの近距離であったが、船首が風に立ったままだから錨が効いて走錨することはないものと思い、守錨当直を行うことなく、その後友人と共に離船し、救命胴衣を着けて海岸付近で遊泳していたところ、やがてスコールが走錨して圧流され始めたものの、このことに気付かなかった。
11時45分A受審人は、スコールが近づいてくるのを見て走錨していることを知り、急ぎ帰船しようとして泳ぐうち、同船は風下の岩礁に向かって圧流され続け、同時55分わずか前ようやく同船に戻って直ちに機関を前進にかけた直後、11時55分筑前西浦港沖防波堤灯台から220度1.25海里の地点において、スコールは、船首を315度に向けて岩礁に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力5の北西風が吹き、波高2メートルの波浪があり、潮候は下げ潮の初期であった。

乗揚の結果、船底外板に擦過傷と推進器翼に曲損をそれぞれ生じ、その後引き下ろしを待つ間に船体が波浪を受けて新たな損傷を生じ、廃船処理された。

(原因)
本件乗揚は、糸島半島西岸沖合において、強い風と高い波浪にさらされ、風下の海岸まで近距離の地点に錨泊した際、守錨当直が行われず、走錨して岩礁に向かって圧流されたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、糸島半島西岸沖合において、強い風と高い波浪にさらされ、風下の海岸まで近距離の地点に錨泊した場合、守錨当直を行うべき注意義務があった。しかし、同人は、船首が風に立ったままだから錨が効いて走錨することはないものと思い、守錨当直を行わなかった職務上の過失により、離船してスコールを走錨させ、圧流されて岩礁への乗揚を招き、船底外板に擦過傷と推進器翼に曲損を生じさせるに至った。






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