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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年広審第102号
    件名
貨物船豊福丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年11月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

織戸孝治、中谷啓二、横須賀勇一
    理事官
向山裕則

    受審人
A 職名:豊福丸二等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船底外板全般凹損

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年7月23日13時20分
香川県豊島東方 カナメ石
2 船舶の要目
船種船名 貨物船豊福丸
総トン数 357トン
全長 54.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
豊福丸は、主に瀬戸内海及び京浜港間のイソプロピルアルコール輸送に従事する、船尾船橋型油タンカー兼引火性液体物質ばら積船兼液体化学薬品ばら積船で、船長B(以下「B船長」という。)及びA受審人ほか3人が乗り組み、空倉のまま、船首1.6メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成9年7月23日10時20分姫路港を発し、徳山下松港に向かった。
B船長は、船橋当直を時計の0時から4時の時間帯をA受審人、同4時から8時の時間帯を一等航海士及び同8時から0時の時間帯を自身がそれぞれ担当する単独4時間3直制を採り、平素、各航海士に対し、狭視界時や船舶輻輳(ふくそう)時に不安を感じるときは連絡するよう指示を行っていた。

尚、B船長は、A受審人とは1週間前から同乗するようになったものの、当該1週間の間に同人の操船技量を確認したこと、及び同人の船員手帳により同人が内航タンカーに一等航海士として乗船していた経歴を有していることとを知ったので同人に前示のとおり船橋当直を任せていた。
こうしてB船長は、発航操船に引き続いて船橋当直に当たり、播磨灘北航路に沿って機関を全速力前進にかけ11.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、自動操舵により航行し、11時30分ごろ播磨灘北航路第6号灯浮標(以下「播磨灘北航路」を冠する航路標識名については「播磨灘北航路」の冠称を省略する。)付近で、A受審人に当直を引き継いだ。
その際、B船長は、海図台の上に置いた海図に記載してある釧路線のとおり第5号、第4号及び第3号の各灯浮標を右舷方に見て航過し、播磨灘北西部にある団子瀬の南側水域を西行して豊島西側の井島水道に至り、同水道を南下して備讃瀬戸東航路に入るよう指示した後自室で休息をとるため降橋した。

当直に就いたA受審人は、B船長の指示どおり播磨灘北航路に沿って航行していたが、第4号灯浮標を航過したころ、通航経験のある団子瀬北側水域を西行しようと思い、B船長の事前の了解を得ることなく、12時25分少し前讃岐千振島灯台(以下「千振島灯台」という。)から050度(真方位、以下同じ。)5.05海里の地点で、針路を団子瀬北側水域に向く249度に定め、同速力で、第3号灯浮標を船首左舷側に見る態勢となって自動操舵により進行した。
12時36分半自室で休息していたB船長は、第3号灯浮標が船首左舷側に見えていることに不審を抱き昇橋したところ、A受審人から団子瀬北側水域の方が慣れているので進路を変更した旨の説明を受けたので、その旨了解して、偶々(たまたま)当日夕食当番に当たっていたことから降橋し、調理室で夕食の準備にかかった。

その後A受審人は、豊島及びその東方に並ぶ小豊島の北方沖合に差し掛かったころ、井島水道方面に数隻の漁船を視認するようになり、過去に井島水道で多数の漁船に遭遇したことがあったことと豊島と小豊島の間の水路の通航経験があったので、井島水道よりも同水路を通航したほうが備讃瀬戸東航路へ安全に達することができると思い、再びB船長の事前の了解を得ることなく、13時00分半千振島灯台から291度2.45海里の地点で、手動操舵に切り替えて、針路を豊島と小豊島のほぼ中間に向く187度に転じて続航した。
ところで豊島と小豊島の間の水路は、最狭部が約500メートルで、同部北方約800メートル豊島東岸の沖合約250メートルのところには、高さ2.2メートルのカナメ石と称される干出岩が存在したが、A受審人は、以前同水路を航行したとき偶々同干出岩が海面上に現れている状況にあったため、目視によりカナメ石を避航しており、同干出岩の存在を特に留意しないまま航行していた。

針路を転じたときA受審人は、自船がカナメ石に向首していたが、過去に無事通航していたことから何ら支障になる危険物はないものと思い、海図に当たって水路調査をしなかったので、このことに気付かず、当時カナメ石がその頂部を海面上にわずかに露出していたものの、同岩の存在を失念して豊島との離岸距離を測りながら進行中、豊福丸は、13時20分千振島灯台から226度3.75海里のカナメ石に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。B船長は、調理室で乗揚の衝撃を感じ、直ちに昇橋したところ乗り揚げたことを知り、事後の措置に当たった。
乗揚の結果、船底外板全般に凹損を生じたが浸水はなく、その後来援した救助船により曳き降ろされ、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、播磨灘北航路を西行中、豊島と小豊島の間の水路を通航する際、水路調査が不十分で、豊島東岸のカナメ石に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、播磨灘北航路を西行中、豊島と小豊島の間の水路を通航する場合、海図に当たって水路調査を行うべき注意義務があった。しかるに同人は、過去に無事通航していたから何ら支障になる危険物はないものと思い、海図に当たって水路調査を行わなかった職務上の過失により、豊島東岸のカナメ石に向首進行していることに気付かず、乗揚を招き、船底外板に凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。


よって主文のとおり裁決する。






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