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1999年(平成11年)

平成11年神審第9号
    件名
遊漁船丸佳丸乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年11月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

佐和明
    理事官
竹内伸二

    受審人
A 職名:丸佳丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
機関室船底外板に破口、浸水、推進器翼及び同軸が曲損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年8月26日07時00分
和歌山県潮岬半島南岸
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船丸佳丸
総トン数 4.3トン
登録長 11.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 169キロワット
3 事実の経過
丸佳丸は、FRP製小型遊漁兼用船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客2人を乗せ、船首0.6メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、平成9年8月26日05時30分和歌山県串本港内の船だまりを発し、潮岬半島南側の釣り場に向かった。
05時40分A受審人は、潮山畔島南東岸マキ埼沖合で丸佳丸を漂泊させて遊漁を開始したが釣果がなく、06時00分ごろ同半島南西岸の米粒岩付近に移動して遊漁を行ったものの、依然釣れなかったので06時40分ごろ潮岬灯台から154度(真方位、以下同じ。)750メートルの地点を発進して同半島南岸にある波ノ浦に向かった。

ところで、波ノ浦は、潮岬半島の南岸に湾入した幅約1,400メートル奥行約800メートルの、多数の干出岩、暗岩及び小島が散在する小湾で、湾内に小魚の群れが回遊すると、それを追ってぶりやひらまさなどの大型回遊魚が入ってくるので、A受審人は、遊漁時に1度は波ノ浦内を航行して魚群探知機で小魚の群れを探すことにしており、同湾内の小島や干出岩の位置を十分に知っていた。
こうして、A受審人は、06時49分潮岬灯台から093度1,630メートルの地点で、波ノ浦湾口部西側にあるナイショ碆と称する暗岩を海面の変色で確認し、これを左舷側50メートルばかり離して通過したとき、針路を湾奥に向く009度に定め、魚群探知機を監視しながら機関回転数を毎分600の極微速力前進にかけ、2.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
A受審人は、平素、波ノ浦東岸湾口部のコマキノ鼻と波ノ浦内の東側に存在するイナヤと称する小島などとの関係を見て船位を確認しながら北上し、イナヤの西北西方450メートルばかりの亀島と称する大潮の低潮時のみ一部が海面から現れる干出岩を避けるため、イナヤがほぼ正横となったところで右転してイナヤの北側に向かう進路をとっていたが、釣り客に釣果がなかったことから、魚群探知機で小魚の群を探すことに気をとられて船位の確認を行わないまま北上した。

06時59分少し過ぎ、A受審人は、潮岬灯台から073度1,800メートルのところで、魚群探知機の示す水深が急に浅くなってきたのを認め、船位の確認をしないまま針路を090度に転じたところ、前路約100メートルの亀島に向首する状況となったが、これに気付かず、機関を半速力前進にかけて増速しながら続航中、07時00分、潮岬灯台から074度1,900メートルの亀島上に、7ノットの速力で原針路のまま乗り揚げて船底を擦過した。
当時、天候は晴で風はなく、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、機関室船底外板に破口を生じて浸水したほか、推進器翼及び同軸が曲損したが、自力航行して波ノ浦湾奥の船だまりに入り、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、和歌山県潮岬半島南岸波ノ浦において、船位の確認が不十分で、波ノ浦中央部の干出岩に向首したまま進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、浅礁や小島が散在する潮岬半島南岸の波ノ浦内を北上中に転針する場合、波ノ浦中央部に亀島と称する干出岩が存在することを知っていたのであるから、同干出岩に乗り揚げることのないよう、付近の小島などで船位の確認を十分行うべき注意義務があった。ところが、同人は、転針時に魚群探知機の監視に気をとられて船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、転針後、同干出岩に向首する態勢となったことに気付かず進行し、これに乗り揚げ、船底部に破口と推進器に損傷を生じさせるに至った。






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