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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年神審第62号
    件名
作業船昌南丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年11月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

佐和明、米原健一、西林眞
    理事官
坂本公男

    受審人
A 職名:昌南丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船尾部船底外板に破口を伴う凹損、浸水、プロペラ及び舵を破損

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年11月10日07時50分
和歌山県田倉埼沖合
2 船舶の要目
船種船名 作業船昌南丸
総トン数 12トン
登録長 14.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 367キロワット
3 事実の経過
昌南丸は、潜水作業に従事するFRP製作業船で、A受審人が1人で乗り組み、作業員1人を乗せ、船首0.5メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、平成10年11月10日06時50分大阪府阪南港を発し、和歌山県由良港に向かった。
A受審人は、友ケ島水道加太瀬戸に向けて南下し、07時41分同瀬戸西側の地ノ島灯台から033度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点に達したとき、針路を和歌山県の田倉埼灯台沖合に向く193度に定め、機関を全速力前進にかけ、20.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
ところで、田倉埼は加太瀬戸の南方約2海里にあって、その周囲には幅150メートルから250メートルにわたる干出岩帯が同埼を囲むように存在しており、その北北西端には同干出岩帯の先端を示す高さ2メートルのコンクリート製パイル(以下「パイル」という。)が設置されていた。そして、さらに干出岩帯の西側には沖合100メートルばかりまで浅礁域が拡延していた。

A受審人は、主に大阪湾内を中心として潜水作業に従事してきたところ、昌南丸就航後は友ケ島水道以南の海域においても同作業を行うようになり、加太瀬戸を経由して田倉埼沖合を通る航海を4回ほど経験していたが、同埼沖合では、パイルの近くに浅礁域が存在することを仕事仲間から聞いていたものの、同パイルの西側沖合200メートルないし300メートルを無難に航過することができていたことから大丈夫と思い、大縮尺の海図第1143号により詳細に水路調査を行っていなかったので、浅礁域の正確な位置や範囲を知らなかった。
こうして、A受審人は、07時44分加太瀬戸の最狭部を通航して南下を続け、同時49分半田倉埼灯台から320度480メートルの地点に差し掛かったとき、船首方に反航船を認め、同船を右舷側に替わすつもりで針路を和歌山下津港南部の地ノ島東端に向く166度に転じたところ、干出岩帯の西端から100メートルばかり沖合を通過する態勢となり、前示浅礁域に著しく接近する状況となったが、あらかじめ同埼付近の水路調査を十分に行っていなかったので、このことに気付かなかった。

A受審人は、パイルをいつもより少し近くに見て航過したものの、浅礁域の沖合を無難に航過できるものと思い、そのままの針路で続航中、07時50分田倉埼灯台から283度210メートルの地点において、昌南丸は、原針路、原速力のまま、田倉埼沖合の浅礁に乗り揚げ、船底を擦過した。
当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の中央期に当たり、付近には微弱な北流があった。
乗揚の結果、船尾部船底外板に破口を伴う凹損を生じて浸水したほか、プロペラ及び舵を破損して航行不能となったが、漁船によっ和歌山県加太港に引き付けられて応急修理されたのち、阪南港に回航されて本修理された。


(原因)
本件乗揚は、友ケ島水道加太瀬戸を田倉埼に接航して南下する際、水路調査が不十分で、同埼西端から拡延する浅礁域に著しく接近して進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、友ケ島水道加太瀬戸を田倉埼に接航して南下する場合、同埼の西側に浅礁域が存在することを知っていたのであるから、あらかじめ大縮尺の海図を使用して同浅礁域の範囲などの水路調査を十分に行うべき注意義務があった。ところが同人は、田倉埼の沖合を何度か無難に航過した経験があったので大丈夫と思い、あらかじめ大縮尺の海図を使用して同浅礁域の範囲などの水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、浅礁域に著しく接近していることに気付かないまま進行してこれに乗り揚げ、船底を擦過し、船尾部船底外板に破口を伴う凹損を生じさせて浸水させるとともに、プロペラ及び舵を破損させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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