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1999年(平成11年)

平成10年広審第124号
    件名
プレジャーボートキングパート?乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年10月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

横須賀勇一、釜谷奬一、織戸孝治
    理事官
向山裕則

    受審人
A 職名:キングパート?船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
推進器と舵損傷、船底全般破損

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年12月21日20時30分
瀬戸内海 伊予灘
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートキングパート?
全長 14.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 183キロワット
3 事実の経過
キングパート?(以下「キング」という。)は、船体中央部に操舵室を有するFRP製プレジャボートで、遊漁の目的で、A受審人が1人で乗り組み、知人1人を同乗させ、船首0.6メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、平成9年12月21日16時00分愛媛県松山港三津浜の係留地を発し、伊予灘北東部に至って魚釣りを開始した。
A受審人は、適宜、釣場を移動して魚釣りを行ったのち愛媛県釣島の西岸を航過して帰航することとし、19時30分情島北岸沖の釣場を発進し、20時25分釣島灯台から289度(真方位、以下同じ。)1,330メートルの地点において、針路を128度に定めて手動操舵とし、機関を半速力前進にかけて、強い南東からの風浪に抗し9.6ノットの対地速力で進行した。

ところで、釣島は南東から北西方に延びる長さ約1キロメートルの細長い形状の島で、同島北端の周辺は約80メートル沖まで舌状に拡延する干出浜(石)からなる険礁地があり、同船は同島周辺海域の海図を常備していた。
20時28分少し前A受審人は、釣島灯台から258度560メートルの地点に達したとき、南東方からの風浪が高くなったので、急遽、これを避けるため予定を変更して釣島北側海域を迂回し、同島東岸沖の小瀬戸を経由して帰航することとしたが、同海域は遠浅であるということは知っていたものの、釣島周辺海域を幾度となく航行した経験があり、慣れた海域であったことから、同島北端を少し離せば大丈夫と思い、常備する海図をあたって釣島北側周辺海域の水路調査を十分に行うことなく、同島北端の周辺は約80メートルにわたって険礁が拡延していることに気付かず、針路を036度として、10.8ノットの対地速力で同島北側に向け進行した。

A受審人は、20時29分半、釣島灯台から324度400メートルの地点に達したとき、針路を090度に向け続航し、同時30分少し前、釣島北端を回り込もうと針路を130度に向けたところ、険礁地に向首することとなり、依然、これに気付ず進行中、キングは、20時30分釣島灯台から342度300メートルの地点の干出浜に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力6の南東風が吹き、海上は波が高く、潮候は低潮時であった。
A受審人は、前示乗揚地点において船体の固定を試みたが、キングは、風浪により船首尾の錨索が切断され同地点から南方400メートルの釣島西岸に打ち上げられた。
その結果、推進器と舵に損傷、船底全般にわたり破損を生じたが、サルベージ船により引かれ、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、夜間、釣島北端周辺の海域を航行する際、同海域の水路調査が不十分で、同島北端部に延出する干出浜に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、釣島西方沖合を帰航する予定で南下中、急遽、風浪を緩和するため予定を変更して同島北端の周辺海域を航行しようとする場合、船内に常備している海図をあたり同海域の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同島周辺海域を幾度となく航行した経験があるので、同島北端を少し離せば大丈夫と思い、船内に常備している海図により水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同島北端部に延出する干出浜に気付かず、同干出浜に向首進行して乗揚を招き、推進器及び舵に損傷、船底全般にわたり破損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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