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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年2月8日23時37分 備讃瀬戸高見島南岸 2 船舶の要目 船種船名
貨物船第三光輝丸 総トン数 377トン 全長 56.52メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 735キロワット 3 事実の経過 第三光輝丸(以下「光輝丸」という。)は、船尾船橋型の油タンカー兼ケミカルタンカーで、A受審人ほか4人が乗り組み、空倉のまま、船首0.6メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、平成10年2月8日22時45分香川県丸亀港外堀岸壁を発し、広島県大竹港に向かった。 A受審人は、出航操船に引き続き1人で船橋当直に就き、22時55分丸亀港蓬莱町防波堤灯台から347度(真方位、以下同じ。)350メートルの地点で、針路を同灯台の西方5海里ばかりにある高見島の南端から約0.7海里離した256度に定め、機関を全速力前進にかけ、同島南端を航過したのち備讃瀬戸北航路に向け北上する予定で折からの1.6ノットの北東流と西風とにより右方に9度圧流され、265度の進路及び7.1ノットの対地速力で進行した。 そのころA受審人は、専ら左舷近距離の蓬莱町護岸に沿って設置されているのり養殖施設に注意を払っていたことから、圧流されていることに気付かないまま続航し、23時ごろ昭和町防波堤灯台沖付近に差し掛かり、それまで立って当直を行っていたものの、のり養殖施設を航過し、前方に支障となる他船もいなかったので、椅子に腰掛けて当直を始めたところ、操舵室内が扉と窓を閉め切っていて暖かかったことなどから眠気を覚え、そのまま椅子に腰掛けて当直を行うと居眠り運航となるおそれがあったが、まさか居眠ってしまうことはないと思い、椅子から立って外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとらずに続航しているうち、いつしか居眠りに陥った。 A受審人は、風潮流に圧流され高見島に向け進行し、23時24分同島南岸まで1.5海里に接近したものの、依然居眠りに陥っていてこのことに気づかず、光輝丸は、居眠り運航のまま続航中、23時37分高見島南岸の高見港南防波堤灯台から203度200メートルの地点に原針路、原速力のまま乗り揚げた。 当時、天候は曇で風力4の西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。乗揚の結果、前部から中央部にかけての船底外板に凹損を、また、プロペラに曲損を生じたが、自力で離礁し、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、夜間、備讃瀬戸西部を西行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、高見島南岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、備讃瀬戸西部において、椅子に腰掛けて当直中、眠気を覚えた場合、居眠り運航とならないよう椅子から立って外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか眠ってしまうことはないと思い、椅子から立って外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、高見島南岸に向首進行して乗揚を招き、光輝丸の船底外板に凹損を、また、プロペラに曲損を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
よって主文のとおり裁決する。 |