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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年横審第2号
    件名
漁業取締船あゆち丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年6月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

半間俊士、勝又三郎、長浜義昭
    理事官
藤江哲三

    受審人
A 職名:あゆち丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
左舷推進軸、同推進軸受、同推進器及び左舷舵に損傷

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年11月19日06時05分
愛知県篠島港西側海域
2 船舶の要目
船種船名 漁業取締船あゆち丸
総トン数 44トン
全長 23.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,426キロワット
3 事実の経過
あゆち丸は、2基2軸で、舵2枚を装備したFRP製漁業取締船で、A受審人ほか5人が乗り組み、愛知県の知多湾及び篠島周辺における、夜明け前の密漁船取締りを行うため、船首1.0メートルの船尾1.7メートルの喫水をもって、平成9年11月18日16時30分定係地の同県三谷漁港を発し、17時30分同県河和漁港に着岸して待機した。
A受審人は、翌19日05時30分河和港を離岸し、次席一等航海士をレーダー監視に、次席一等機関士を魚群探知機による水深計測に、一等航海士を操舵に、機関長を機関の遠隔操作にそれぞれ当たらせ、自ら運航の指揮を執って知多湾を東行し、同漁港対岸の一色港周辺の様子を探ったのち、同県師崎水道に向かった。
05時59分ごろA受審人は、師崎水道を南下して篠島港西方海域に達したとき、レーダー監視に当たっていた次席一等航海士から、篠島港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)の西側近くに5隻ばかりの漁船らしい映像がある旨の報告を受け、その操業状況を確認することとし、6時00分少し過ぎ西防波堤灯台から298度(真方位、以下同じ。)1,300メートルの地点で針路を128度に定め、機関を微速力前進にかけ、折からの約1ノットで北方に流れる潮流により5度ばかり左方に圧流されながら8.6ノットの対地速力で進行した。
ところで、篠島港西側に所在する木島西方至近には西防波堤灯台から300度250メートルのところに干出岩が、また、その周囲には水深5メートル以下の浅瀬が存在し、この浅頼の南端部で、同干出岩から南側へ100メートルばかりにあたる、木島南西方200メートルのところに、航行に危険な暗岩があり、この暗岩は海図第1054号(師崎水道)に記載されていた。
A受審人は、漁業取締り業務を行うことから陸岸に接近することが多いため、装備されている重畳レーダーに、同業務中に知ったのり養殖施設等の漁業施設や干出岩など障害物の位置データを入力し、これらの障害物や陸岸から0.15海里沖又は水深5メートルのところを目安にして運航に当たっていた。そして、平素篠島周辺を航行するにあたり、前示干出岩とその周囲に浅瀬が存在することを知っていたので、同業務のために篠島港に西側から接近するときには、レーダー及び魚群探知機に部下を配置し、連続して障害物からの距離及び水深を報告させながら、目安にしていた距離や水深に注意して運航すれば大丈夫と思い、船内に備え付けられていた海図第1054号を、事前に精査するなどして付近の水路調査を十分に行わなかったので、木島南西方にある暗岩の存在に気付かなかった。
こうして、A受審人は、06時03分西防波堤灯台から292度600メートルの地点に達したとき、機関回転を極微速前進に下げ、同一針路のまま7度ばかり左方に圧流され、6.4ノットの対地速力で、前路に存在する暗岩に気付かないまま、部下にレーダーによる距離と魚群探知機による水深を連続して報告させ、ヌ眼鏡で漁船を監視しながら進行し、同時04分半少し前木島から0.15海里まで近づいたとき、探照灯で漁船を照射したものの、操業模様を確認できず、水深が10メート川まかりあったので、更に続航して漁船の監視を続けていたところ、同時05分少し前同漁船が密漁船でないことがわかり、水深が5メートルに近づいてきた旨の報告を受けて右舵一杯として回頭中、06時05分船首が148度を向いたとき、西防波堤灯台から274度200メートルの地点において、暗岩に約6ノットの対地速力で乗り揚げ、これを擦過した。
当時、天候は晴で風力3の北北西風が吹き、付近海域には北方に流れる約1ノットの潮流があった。
乗揚の結果、左舷推進軸、同推進軸受、同推進器及び左舷舵にそれぞれ損傷を生じたが、右舷機のみで定係地まで航行し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、篠島港西側海域で漁業取締り業務を行う際、同海域に対する水路調査が不十分で、同海域に存在する暗岩に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、篠島港西側海域で漁業取締り業務を行う場合、漁船の操業状況確認のため、陸岸に接近する必要があるから、陸岸近くに存在する暗岩に乗り揚げないよう、事前に船内備え付けの海図第1054号を精査するなどして付近の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、レーダー及び魚群探知機に部下を配置し、連続して障害物からの距離及び水深を報告させながら、目安にしていた距離や水深に注意して運航すれば大丈夫と思い、海図による篠島港西側付近の水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、前路に存在する暗岩に気付かないまま進行して乗り揚げ、左舵推進軸、同推進軸受、同推進器及び左舷舵にそれぞれ損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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