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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年長審第47号
    件名
貨物船第五栄進丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年2月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

保田稔、安部雅生、原清澄
    理事官
小須田敏

    受審人
A 職名:第五栄進丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:第五栄進丸一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船底外板に破口を伴う凹損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年1月19日05時50分
長崎県五島列島福江島崎山鼻東方小立島付近
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第五栄進丸
総トン数 198.20トン
登録長 41.81メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第五栄進丸(以下「栄進丸」という。)は、船首部にクレーン1基を装備した船尾船橋型鋼製砂利採取運搬船で、A、B両受審人ほか2人が乗り組み、長崎県五島列島福江島東方の椛島において、石材約200立方メートルを積み、同県富江港で揚荷することとなったが、クレーンが故障したので同県相浦港で修理したのち、船首2.00メートル船尾3.90メートルの喫水をもって、平成8年1月19日00時00分同港を発し、富江港に向かった。
ところで、A受審人は、船長経歴が15年ばかりで、富江港には年間約15回出入航して福江島東方海域の水路事情に精通しており、船橋当直については、近距離の航海が多いこともあって、常に在橋して自らが主となって行い、部下がころあいを見計らって昇橋して来た際には、適宜交替して操舵室内後部の畳敷き台の上で仮眠をとるなどしていた。
一方、B受審人は、漁船の乗組員としての経験が長かったところ、同月14日栄進丸に初めて貨物船の船員として乗り組んだばかりで、栄進丸が航行する海域の通航経験が少ないうえ、船橋当直の定めがない同船の慣習に戸惑いがあったものの、A受審人から何らの指示を受けないまま、便宜昇橋しては同人と交替して船橋に就いていた。
発航後、A受審人は、機関を全速力前進にかけ、8.8ノットの対地速力で進行し、同月19日02時50分横曽根灯標から193度(真方位、以下同じ。)3.0海里の地点に達したとき、針路を232度に定めて自動操舵とし、時折レーダーのレンジを適宜切り替えて画面を監視しながら続航した。
こうして、A受審人は、椛島東方海域に達して同島をレーダーで3海里ばかりに認めることができるようになったころ、付近に他船を見かけなかったことから畳敷き台に腰掛けて見張りに当たっていたところ、05時00分鷹ノ巣鼻灯台から146度2.6海里の地点に達したとき、B受審人が昇橋したことに気付き、乗船して間もない同人と船橋当直を交替することとしたが、同人は自分より上級海技免状を所持しているので何も言わなくても大丈夫と思い、船位や周囲の状況を詳細に知らせたり、針路を指示したりするなどの船橋当直の引継ぎを行うことなく、そのまま横になって仮眠についた。
A受審人と交替するつもりで昇橋したB受審人は、船橋前部に人影がなく、A受審人が既に畳敷き台の上で横になっている様子を認め、船位も周囲の状況も不明の状態で船橋当直に就くこととなったが同人が定めた針路のまま航行すれば大丈夫と思い、速やかにレーダーや海図を活用するなど、船位の確認を行うことなく、操舵スタンド右舷側でいすに腰掛け、右舷前方に見えた街明かりが福江島のものであろうと見当をつけて同一の針路、速力のまま漫然と進行した。
05時40分ごろB受審人は、前路に黒い島影を認め、これがどの島か分からないまま、同時43分とりあえず同島影を左舷側に替わすつもりで自動操舵のまま針路を237度に転じ、依然としてレーダーや海図を活用せずに同じ姿勢で続航中、05時50分栄進丸は、黄島灯台から010度4.7海里の地点で、福江島崎山鼻東方沖合の小立島北方に拡延する暗礁に、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期であった。
A受審人は、乗揚の衝撃を感じて飛び起き、機関を停止したのち事後措置に当たった。
乗揚の結果、船底外板に破口を伴う凹損等を生じたが、サルベージ業者などの来援を受けて離礁し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、長崎県五島列島福江島東方海域を航行中、船位の確認が不十分で、小立島北側に拡延する暗礁に向首進行したことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは、船長が、船橋当直の引継ぎを行わなかったことと、船橋当直者が、船位を確認しなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、長崎県五島列島福江島東方海域を航行中、昇橋してきた一等航海士と船橋当直を交替する場合、同人は同海域の通航経験が少なかったから、同人に対して船位や周囲の状況を詳細に知らせたり、針路を指示したりするなどの船橋当直の引継ぎを十分に行うべき注意義務があった。しかし、A受審人は、一等航海士は自分より上級の海技免状を所持しているので何も言わなくても大丈夫と思い、船橋当直の引継ぎを十分に行わなかった職務上の過失により、乗揚の事態を招き、船底破口などを生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、夜間、長崎県五島列島福江島東方海域を航行中、船長から船橋当直の引継ぎを受けられずに船位などが不明の状態で船橋当直に就くこととなった場合、周囲の状況を把握できるよう、速やかにレーダーや海図を活用するなどの船位の確認を行うべき注意義務があった。しかし、B受審人は、船長が定めた針路のまま航行すれば大丈夫と思い、船位の確認を行わなかった職務上の過失により、漫然と進行して乗揚を招き、前示損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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