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1999年(平成11年)

平成11年那審第2号
    件名
貨物船大東丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年8月5日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:大東丸船長 海技免状:四級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
船体中央部船底に亀裂を伴う凹傷、舵を曲損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年10月26日02時20分
沖縄県伊是名島北東岸
2 船舶の要目
船種船名 貨物船大東丸
総トン数 499トン
全長 75.88メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
大東丸は、那覇、呉、新居浜、高松及び広島各港間の定期航路に従事する船尾船橋型の貨物船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか4人が乗り組み、雑貨約800トンを載せ、船首2.9メートル船尾4.7メートルの喫水をもって、平成10年10月24日09時50分広島港を発し、沖縄県那覇港に向かった。
翌々26日00時00分A受審人は、ヤクニヤ埼灯台から263度(真方位、以下同じ。)14.8海里の地点で、針路を210度に定め、B指定海難関係人に船橋当直を引き継ぎ、自室で休息をとった。
ところで、B指定海難関係人は、平成9年7月に甲種甲板部航海当直部員の証印を受けていた。一方、A受審人は、B指定海難関係人が豊富な船橋当直経験を持ち航海当直部員の職務全般についての知識、能力を有することを認めていたことから船橋当直を任せていた。また、A受審人は、那覇港出航後、B指定海難関係人を船橋当直以外の業務に従事させてなく、同人には十分休養を取らせていた。
単独の船橋当直に就いたB指定海難関係人は、操舵室内右舷前部のいすに腰掛けて見張りを行い、同じ針路で自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて13.0ノットの対地速力で進行した。
01時55分B指定海難関係人は、正船首少し左に紅灯1個を認め、その後同灯火が接近するので、同時57分仲田港東防波堤灯台から039度6.2海里の地点で、自動操舵のまま針路を225度に転じて同灯火を左方に替わした。そのとき、時刻が02時であったことから、同人は、GPSを使用して船位を測得することに気をとられ、針路を原針路に戻すことを失念した。
B指定海難関係人は、02時の船位を海図に記入してほぼ針路線上であることを確かめたが、コンパスを見なかったので針路が225度のままであることに気付かず、再びいすに腰掛けて見張りを行っているうち、周囲に他船を認めなかったことから気が緩み、眠気を催したが、立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとらず、いつしか居眠りに陥った。
大東丸は、225度の針路、原速力のまま続航し、02時20分仲田港東防波堤灯台から021度1.3海里のさんご礁に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力4の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
A受審人は、自室で就寝中、乗揚の衝撃で目を覚まして昇橋し、事後の措置に当たった。
乗揚の結果、船体中央部船底に亀裂を伴う凹傷を生じ、舵を曲損したが救助船により引き降ろされて那覇港に引き付けられ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、沖縄県伊平屋島東岸を伊江水道に向かって南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同県伊是名島北東岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人等の所為)
B指定海難関係人が、夜間、沖縄県伊平屋島東岸を伊江水道に向かって南下中、居眠り運航の防止措置をとらなかったことは、本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては、勧告するまでもない。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

よって主文のとおり裁決する。






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