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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年那審第26号
    件名
旅客船第七十八あんえい号乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年1月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

東晴二、井上卓、小金沢重充
    理事官
道前洋志

    受審人
A 職名:第七十八あんえい号船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
両舷のプロペラに曲損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年1月17日15時25分
沖縄県八重山列島黒島港
2 船舶の要目
船種船名 旅客船第七十八あんえい号
総トン数 19トン
登録長 18.48メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,213キロワット
3 事実の経過
第七十八あんえい号(以下「あんえい号」という。)は、航行区域を沿海区域(限定)とする軽合金製旅客船で、有限会社Rが船舶所有者から借り受けて沖縄県石垣港と同県黒島の黒島港との間で1日4往復の定期運航を行っていたものであるが、A受審人ほか1人が乗り組み、旅客6人を乗せ、船首0.2メートル船尾1.1メートルの喫水をもって、平成10年1月17日15時00分石垣港発の第3便として定時に同港を発し、黒島港に向かった。
ところで、黒島北岸西寄りのところに位置する黒島港は、防波堤(北)と防波堤(西)により囲われ、両防波堤の間が防波堤入口となっていて、元来黒島北側毎域は浅水域で、かつ浅礁が散在していたことから、同港岸壁から防波堤入口を経て沖合に至る333度(真方位、以下同じ。)方向に幅30メートル、深さ3メートルの直線状の水路(以下「水路」という。)が掘られていた。また、水路中途に東方から接近するときの目標として、黒島第4号立標(以下「第4号立標」という。)の航路標識のほか、第4号立標から255度380メートルの位置に私設の黄色簡易浮標が設置されていた。
そして、A受審人は、石垣港と黒島港との間の定期航路の船長として黒島港に頻繁に寄港していたことから、同港付近の浅礁の所在などを含めた航路事情についてはよく知っており、水路を黒島港防波堤入口に向かって航行しようとするとき、いずれも水路中央線上の防波堤入口中央と港奥のフェリー岸壁とを見通すようにしていた。
こうして、A受審人は、発航後操舵室運転席に腰掛けて操船に当たり、途中激しい降雨があったが、竹富島南水路を経て大原航路に入り、15時21分半大原航路第11号立標から245度250メートルの地点に達したとき、針路を208度に定め、機関を全速力前進にかけ、27.0ノットの対地速力で進行し、同時24分少し過ぎ第4号立標から035度300メートルの地点で、針路を水路東側の前示黄色簡易浮標を正船首少し右方に見る235度に転じた。
A受審人は、雨はやんだものの、海水が濁って浅礁が目視できないなか、続航し、15時25分少し前第4号立標から253度340メートルの地点で、速力を20.0ノットに減じ、更に黄色簡易浮標を右舷側至近に見て通過したとき、水路に進入しようと左転を開始した。
ところがA受審人は、左転中左方に存在する水路東側至近の浅礁に近づかないようにのみ気を遣い、防波堤入口中央とフェリー岸壁とを見通すなどの船位の確認を行わなかったので、水路西側至近の浅礁に接近する状況であったが、このことに気付かず、程なく大回りし過ぎたため水路外に出て同浅礁に接近する状況となっていることを知り、水路中央線に寄せようと左転を続け、15時25分第4号立標から246度420メートルの地点において、あんえい号は、150度に向いたとき、同浅礁に乗り揚げ、擦過した。
当時、天候は曇で風力4の北風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果、両舷のプロペラに曲損を生じ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、沖縄県黒島港に入港するにあたり、水路中途東側から左転して水路に入る際、防波堤入口中央と港奥のフェリー岸壁とを見通すなどの船位の確認が不十分で、水路西側至近の浅礁に接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、黒島港に入港するにあたり、水路中途東側から左転して水路に入る場合、水路西側至近の浅礁に近づかないよう、防波堤入口中央と港奥のフェリー岸壁とを見通すなどして船位を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、左方に存在する水路東側至近の浅礁に近づかないようにのみ気を遣い、船位を確認しなかった職務上の過失により、水路西側至近の浅礁に接近して乗揚を招き、両舷プロペラを損傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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