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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年1月21日17時57分 沖縄県那覇港 2 船舶の要目 船種船名
貨物船しゅり2 総トン数 6,178トン 全長 136.66メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 6,178キロワット 3 事実の経過 しゅり2は、船首船橋型のロールオン・ロールオフ船で、A受審人ほか12人が乗り組み、コンテナなど1,000トンを載せ、船首4.60メートル船尾5.97メートルの喫水で、平成11年1月21日17時45分那覇港新港ふ頭を発し、大阪港に向かった。 ところで、那覇港新港ふ頭を発して同港唐口に向け出航する航路筋南側には、那覇新港船だまり防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から238度(真方位、以下同じ。)1,960メートルの地点に那覇港泊第2号灯浮標が、同灯台から218度770メートルの地点に那覇港第6号灯浮標がそれぞれ設置されており、両灯浮標の見通線の南側約60メートルまで陸岸から浅礁が張り出していた。 A受審人は、新港ふ頭を発するにあたり、船長として同港の入出港経験が2度あり、同港内の各所に浅礁があることを知っていたが、それらの正確な位置を知らないまま、港内の灯浮標を目視して無難に航行できたことから大丈夫と思い、あらかじめ海図にあたるなどして港内の浅礁の拡延状況を知るための水路調査を十分に行わなかった。 こうして、A受審人は、陸岸から拡延する浅礁の正確な位置を知らないまま、自ら操船に当たり、新港ふ頭を離れたあと、17時52分防波堤灯台から223度760メートルの地点で、針路を248度に定め、機関を微速力前進に掛け、7.0ノットの対地速力で、甲板手を舵輪に就け、折からの北北東風の影響を受け左方に3度ばかり圧流されながら進行した。 A受審人は、17時55分防波堤灯台から232度1,240メートルの地点に達したとき、左舷船首1点930メートルばかりに前路を右方に横切る引船列を初めて認め、同引船列を避航することとして左舵5度を取って機関を極微速力とし、同引船列の動向を注視してゆっくりと左転を続けたところ、陸岸から拡延する浅礁に次第に接近していたが、そのことに気付かず、同時57分少し前同引船列が船首を右方に替わったので原針路に戻すため右舵10度を取った。 しゅり2は、左回頭惰力が止まった直後、17時57分防波堤灯台から233度1,600メートルの地点において、7.0ノットの対地速力で、238度に向首して浅礁に乗り揚げた。 当時、天候は晴で風力4の北北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。 乗揚の結果、左舷前部船底に擦過傷を生じた。
(原因) 本件乗揚は、那覇港新港ふ頭を発し、同港唐口に向け出航する際、水路調査が不十分で、陸岸から拡延する浅礁に著しく接近したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、那覇港新港ふ頭を発し、同港唐口に向け出航する場合、港内の浅礁の拡延状況を知るための水路調査を十分に行うべき注意義務があった。ところが同人は、港内の灯浮標を目視して無難に航行できたことから大丈夫と思い、港内の浅礁の拡延状況を知るための水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、陸岸から拡延する浅礁の正確な位置を知らないまま、浅礁に著しく接近して乗揚を招き、左舷前部船底に擦過傷を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |