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1999年(平成11年)

平成10年広審第117号
    件名
プレジャーボート博幸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年7月13日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

横須賀勇一、杉崎忠志、織戸孝治
    理事官
川本豊

    受審人
A 職名:博幸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
左舷中央部船底に破口を生じて転覆、船外機に濡れ損

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年11月8日07時15分
瀬戸内海安芸灘
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート博幸
登録長 4.59メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 18キロワット
3 事実の経過
博幸は、船外機付きFRP製プレジャーボートで、遊漁の目的で、A受審人が1人で乗り組み、同人の息子1人及び友人2人を乗せ、船首0.2メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、平成9年11月8日07時00分愛媛県北条市大浦の定係地を発し、その北東方約1.5海里にある汐出磯灯標南東方の釣り場に向かった。
ところで、汐出磯灯標南側の愛媛県高縄半島北岸は、潮位により海面上に見え隠れする干出岩が拡延する干出浜(岩)からなる海岸で、このような水路事情は、海図第141号によって調査することにより、この海岸に接近することは極めて危険であることを十分に認識することが可能であった。
A受審人は、平素、前示釣り場に向かう進路を汐出磯灯標と高縄半島との中央に向け、同半島の海岸との距離を約200メートルに保持して北東進しており、これより近寄って航行することは今までなかったことから、今回も、海岸へ近寄ることはないと思い、発航に先立ち、海図に当たるなどして水路調査を十分に行わなかったので、同岸線の沖約50メートルに渡って干出岩が拡延する干出浜(岩)からなる海岸であることに気付かなかった。
こうして、A受審人は、高縄半島北岸をこれに沿い海岸を十分に離して航行し、07時03分汐出磯灯標から231度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点において、針路を同灯標と海岸の中央に向け056度に定め、右舷船尾に腰掛けた姿勢となって左手で船外機の舵棒を持ち操舵に当たり、機関を全速力前進にかけ、5.5ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、07時12分汐出磯灯標から219度600メートルの地点に達したころ、左横方からの風浪が急激に強まり船体が横揺れするので、これを緩和するため、風浪を船首方から受けるよう針路を003度に転針したところ、今度は船体の縦揺れが激しくなったことから、海岸に近寄って釣り場に向かうこととし、同時12分少し過ぎ汐出磯灯標から219度550メートルの地点に達したとき、急遽反転して、船尾方向から風浪を受けるよう、針路を136度として前示海岸に向首続航したが、前示のとおり水路調査を十分に行っていなかったので、干出浜(岩)からなる海岸に気付かなかった。
07時14分A受審人は、汐出磯灯標から195度600メートルの、海岸から約50メートルの地点に達したとき、風浪も少し穏やかになったことから、目的の釣り場に向かうこととして、針路を海岸にほぼ沿う083度に転じたところ、同海岸の干出岩に向首進行することとなった。
A受審人は、いつもより、海岸に近寄っているのを知ったものの、依然、海岸に接航しても大丈夫と思い、前示干出岩に向首進行して続航中、博幸は、07時15分汐出磯灯標から181度600メートルの地点の干出岩に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力3の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、視界は良好であった。
乗揚の結果、左舷中央部船底に破口を生じて転覆し、船外機に濡れ損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、愛媛県高縄半島北方水域を航行する際、水路調査が不十分で、同水域の海岸に接近し、干出岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、高縄半島北方水域を航行する場合、発航に先立ち、海図等に当たり同水域の海岸の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、海岸に近寄ることはないと思い、海図等により水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同海岸の干出岩に気付かないまま、同海岸に接近し、同干出岩に向首進行して乗揚を招き、博幸の船底に破口を生じ、転覆を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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