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1999年(平成11年)

平成10那審第35号
    件名
旅客船サザンクロス3号乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年2月10日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

小金沢重充、東晴二、井上卓
    理事官
阿部能正

    受審人
A 職名:サザンクロス3号船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
両舷プロペラ曲損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年4月13日15時45分
沖縄県小浜島小浜港港沖合
2 船舶の要目
船種船名 旅客船サザンクロス3号
総トン数 19トン
全長 22.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,029キロワット
3 事実の経過
サザンクロス3号(以下「サザンクロス」という。)は、航行区域を限定沿海区域とする軽合金製旅客船で、R株式会社が船舶所有者から借り受け、沖縄県石垣港を中心に同県八重山列島の各港間で定時運行されており、A受審人ほか1人が乗り込み、旅客13人を乗せ、船首0.6メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成10年4月13日15時40分小浜島小浜港を発し、石垣港へ向かった。
A受審人は、離岸時から降雨により視界が制限された状況の下、自ら操舵操船に当たり、防波堤(南)北東端と防波堤(北)南東端との間の防波堤入口ほぼ中央に向着しながら徐々に減速し、15時43分少し前、小浜港第6号立標(以下「第6号立標」という。)から262度(真方位、以下同じ。)1,540メートルの地点に達したとき、針路を同立標付近に向かう080度に定め、機関を半速力前進にかけ、13.0ノットの対地速力で進行した。
ところで、小浜港から石垣港へ向かう航路上には航路標識としていくつかの立標が設置されており、A受審人は、防波堤入口を航過してから次の航過目標である第6号立標に至る途中に浅礁が存在することを十分承知しており、海水色の変化あるいは同立標との位置関係により浅礁の位置を確認し、これを左方に替わすよう針路を転じることにしていた。
また、船橋内右舷側前部に設置されたGPSプロッターには、海図に加え、各立標の位置及び石垣港に至る予定針路線も入力されていた。
15時44分A受審人は、依然激しい降雨により著しく視界が制限された状況であったが、そのうち第6号立標が目視できるものと思い、GPSプロッターによる船位の確認を行うことなく、同立標を探しながら進行した。
15時44分半わずか前、A受審人は、第6号立標から263度860メートルの転針予定地点に達していたが依然として同立標を探すことに気をとられていたので、このことに気付かず、浅礁に著しく接近する態勢のまま続航し、15時45分第6号立標から265度610メートルの地点において、サザンクロスは、原針路、原速力のまま浅礁南端に乗り揚げ、擦過した。
当時、天候は雨で風力3の北北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、両舷プロペラに曲損を生じ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、浅礁が散在する沖縄県小浜島小浜港沖合において、石垣港へ向け東行中、激しい降雨で著しく視界が制限された際、GPSプロッターによる船位の確認が不十分で、浅礁に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、浅礁が散在する小浜港沖合において、石垣港へ向け東行中、激しい降雨で著しく視界が制限され、航過目標としていた第6号立標が見えなかった場合、同立標及び予定針路線がGPSプロッターに入力されていたのであるから、同プロッターによる船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、第6号立標を目視で探すことにのみ専念し、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、浅礁に著しく接近して乗揚を昭き、両舷プロペラに曲損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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