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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年3月27日04時11分 福岡県玄界島北西岸沖合 2 船舶の要目 船種船名
貨物船みやこ丸 総トン数 499.05トン 全長 59.04メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 1,029キロワット 3 事実の経過 みやこ丸は、船尾船橋型のセメント運搬船で、A及びB両受審人ほか5人が乗り組み、高炉セメント800トンを載せ、船首3.25メートル船尾4.24メートルの喫水をもって、平成10年3月26日23時54分関門港小倉区を発し、熊本県八代港に向かった。 ところで、みやこ丸は、平素、玄界灘を西行する際には、筑前大島灯台の北西方1.1海里の地点から238度(真方位、以下同じ。)の針路で烏帽子島の北方を通って佐賀県加唐島の黒水鼻の北方に至るコース又は同地点から229度の針路で長間礁の北方を通って唐津湾沖合に至るコースを採用し、また、倉良瀬戸を経由する場合には、同瀬戸から227度の針路で玄界島の北方に至って更に233度の針路で柱島の北方を通って唐津湾沖合に至るコースを採用し、備え付けていた海図第1228号(玄界灘)には、前示の各コースを示す3本のコースラインが記載されていた。 A受審人は、筑前大島灯台の北西方に達したとき、波が高くて船首に波をかぶる状況であったことから、平素採用していたコースではなく、それまで航行したことのない陸岸寄りのコースを採ることとし、翌27日02時42分同灯台から287度1.2海里の地点に至ったとき、針路を玄界島の北方に向く212度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.6ノットの対地速力で自動操舵により進行した。 B受審人は、03時40分玄界島灯台から025度5.2海里の地点で昇橋し、海図を見るなどの入直準備を行った。 A受審人は、03時50分玄界島灯台から022度3.5海里の地点に達したとき、B受審人に対して当直交替前の引継ぎを行い、平素採用していたコースではなく、それまで航行したことのない陸岸寄りのコースを採っている旨を引き継いだが、海図に現在の針路を示すコースラインと玄界島の北方から柱島の北方を通って唐津湾沖合に至る次の予定針路を示すコースラインが記載されていたので、B受審人に針路を指示しなくても同受審人が海図に記載されたコースラインに沿って航行するものと思い、船位を十分に確認して予定の針路に沿って航行するよう明確に指示することなく、当直を交替して降橋した。 B受審人は、単独で操舵と見張りに当たり、引き継いだ針路で進行し、04時04分半玄界島灯台から355度1.1海里の地点に達し、柱島の北方を通って唐津湾沖合に至る次の予定針路に向ける転針予定地点に至ったものの、玄界島に接近するまでまだ余裕があるものと思い、レーダーを活用するなどして船位を十分に確認しなかったのでこれに気付かず、針路が転じられないまま玄界島と柱島の間の浅所に向かって続航中、04時11分玄界島灯台から284度0.7海里の地点において、みやこ丸は、原針路、原速力のまま暗礁に乗り揚げた。 当時、天候は小雨で風力3の南西風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、26日17時00分から翌27日10時30分までの間、福岡管区気象台から、雷、強風、波浪注意報が発表されていた。 A受審人は、自室で休息中、乗揚の衝撃とB受審人からの報告によって乗り揚げたことを知り、昇橋して乗組員に損傷の確認を指示するなど、事後の措置に当たった。 乗揚の結果、船首船底に凹損を生じたが、自力で離礁し、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、夜間、福岡県玄界島北方を西行する際、船位の確認が不十分で、玄界島と柱島の間の浅所に向かって進行したことによって発生したものである。 運航が適切でなかったのは、船長が、船橋当直者に対して船位を十分に確認して予定の針路に沿って航行するよう明確に指示しなかったことと、船橋当直者が、船位を十分に確認しないまま玄界島と柱島の間の浅所に進入したこととによるものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、福岡県玄界島北方を西行する場合、玄界島と柱島の間の浅所に向かって進行することのないよう、船橋当直者に対し、それまで航行したことのないコースで進行していたので、船位を十分に確認して予定の針路に沿って航行するよう明確に指示すべき注意義務があった。しかるに、同人は、使用海図に現在の針路を示すコースラインと次の予定針路を示すコースラインが記載されていたことから、船橋当直者に指示しなくても同当直者が海図に記載されたコースラインに沿って航行するものと思い、船位を十分に確認して予定の針路に沿って航行するよう明確に指示しなかった職務上の過失により、同当直者が船位を十分に確認しないまま玄界島と柱島の間の浅所に進入して乗揚を招き、船首船底に凹損を生じさせるに至った。 B受審人は、夜間単独で船橋当直に当たり、福岡県玄界島北方において、それまで航行したことのないコースで西行する場合、玄界島と柱島の間の浅所に向かって進行することのないよう、船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、玄界島に接近するまでまだ余裕があるものと思い、レーダーを活用するなどして船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、柱島の北方を通って唐津湾沖合に至る次の予定針路に向けて転針せず、原針路のまま玄界島と柱島の間の浅所に進入して乗揚を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。 |