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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年那審第20号
    件名
漁船かつ丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年9月30日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

清重隆彦、金城隆支、花原敏朗
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:かつ丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底が大破し全損

    原因
漁労作業不適切(合図の確認不十分)

    主文
本件乗揚は、素潜り漁中の乗組員を揚収する際の合図の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年12月14日20時00分
鹿児島県奄美大島東岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船かつ丸
総トン数 4.70トン
登録長 10.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
かつ丸は、素潜り漁に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.5メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成10年12月14日17時00分鹿児島県奄美大島小湊漁港を発し、同港南西方の住用湾に向かった。
ところで、A受審人らが行う素潜り漁は、夜間、陸岸沿いに拡延する岩場で、2人の乗組員が交互に素潜り漁とかつ丸の操船とを受け持ち、それぞれの作業を約1時間で交代する方法で、素潜り漁を行う者は操船者への合図及び魚を捜すために使用する懐中電灯と銛(もり)を持ち、獲物を入れる籠(かご)をロープで体に結び付けて岩場に向かい漁を行う。一方、操船者は素潜り漁を行う者の懐中電灯の灯火を見てその沖約100メートルに位置し、同灯火を追尾する。
そして、A受審人らは、それぞれの作業を交代する場合には、素潜り漁者が岩場から約20メートル沖の安全な地点まで移動したあと、合図としてかつ丸に向かって懐中電灯の灯火を3回照射し、これを認めた操船者がその灯火に接近して揚収し、交代することとしていたが素潜り漁中の素潜り漁者の動作で灯火が波間に見え隠れして、意図しないままかつ丸に向かって照射したような状況となることがたびたびあったことから、その合図を十分に確認したあと素潜り漁者が持つ懐中電灯の灯火に接近する必要があった。
また、A受審人は、長年住用湾で素潜り漁を行っていて、付近の水路事情については十分承知しており、2人で同漁を行う際のお互いの信頼関係の重要さを認識していたとともに、約1時間素潜り漁を行った後に交代のための揚収を要求する合図を送ったにもかかわらず、かつ丸が直ちに近づいてこなかった場合、死亡事故につながるおそれがあることと、以後お互いの信頼関係が薄れて同漁中に死亡事故につながりかねないこととを知っていた。
A受審人は、19時10分ごろ奄美大島大平山286メートル頂から109度(真方位、以下同じ。)1,590メートルの地点に達し、素替り漁を開始することとして白色全周灯を掲げ、機関を停止回転とした。そして、甲板員が海に入り素潜り漁を開始したので、機関回転数を毎分500回転とし、レーダー及び魚群探知器の設備がなく、船位を確かめる手段がなかったうえ、暗夜で雨が降っていて陸岸を視認することができない状況のもと、甲板員が持つ懐中電灯の灯火を右舷方に見ながら、前進と中立を繰り返し、手動操舵により南下した。
19時59分A受審人は、大平山286メートル頂から118度1,900メートルの地点に達したとき、素潜り漁中の甲板員の動作によって生じた、交代のための揚収を要求する合図のような懐中電灯の照射を認めたが、いつものように、甲板員が陸岸沿いに拡延する岩場の沖の安全な地点まで移動して同合図を送ったものと思い、その照射が揚収を要求する合図であったかどうかを十分に確認することなく、甲板員が持つ懐中電灯の灯火に向かって針路を260度とし、2.0ノットの対地速力で、同岩場に著しく接近する態勢で進行した。
かつ丸は、原針路、原速力で続航し、20時00分大平山286メートル頂から119度1,850メートルの地点で、暗岩に乗り揚げた。
当時、天候は雨で風力3の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船底が大破し全損となった。

(原因)
本件乗揚は、夜間、鹿児島県奄美大島東岸で素潜り漁に従事中、レーダー及び魚群探知器の設備がなく、暗夜で雨が降っていて陸岸を視認することができない状況のもと、素潜り漁中の甲板員の動作によって生じた、交代のための揚収を要求する合図のような懐中電灯の照射を認めた際、同照射が揚収を要求するための合図であったかどうかの確認が不十分で、懐中電灯の灯火に向かって進行し、陸岸に拡延する岩場に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人が、夜間、鹿児島県奄美大島東岸で素潜り漁に従事中、レーダー及び魚群探知器の設備がなく、暗夜で雨が降っていて陸岸を視認することができない状況のもと、素潜り漁中の甲板員の動作によって生じた、交代のための揚収を要求する合図のような懐中電灯の照射を認めた場合、同照射が揚収を要求するための合図であったかどうかの確認を十分に行わなかったことは、本件発生の原因となる。しかし、当時、暗夜で雨が降っていて陸岸を視認することができず、風力3の北北西の風が吹いていて海上には多少の波があり交代を要求するための合図の照射が波間に見え隠れすることが考えられる状況下、約1時間素潜り漁を行った後に交代のため揚収を要求する合図を送ったにもかかわらず、同合図の確認のためかつ丸の行動開始が遅れた場合、死亡事故につながるおそれがあるとともに、以後お互いの信頼関係が薄れて同漁中の死亡事故につながりかねない点に徴し、このことを同人の職務上の過失とするまでもない。

よって主文のとおり裁決する。






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