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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年広審第33号
    件名
貨物船共和丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年9月2日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

横須賀勇一、杉崎忠志、黒岩貢
    理事官
向山裕則

    受審人
A 職名:共和丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首船底に破口を伴う凹損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年4月11日23時55分
瀬戸内海伊予灘中島南西岸
2 船舶の要目
船種船名 貨物船共和丸
総トン数 199トン
登録長 50.73メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 404キロワット
3 事実の概要
共和丸は、国内各港間を鋼材運搬に従事する船尾船橋型の貨物船で、A受審人及びB指定海難関係人が乗り組み、鋼材659トンを積載し、船首2.90メートル船尾3.85メートルの喫水をもって、平成10年4月11日14時10分関門港若松区を発し、名古屋港に向かった。
A受審人は、B指定海難関係人との約6時間2交代の船橋当直体制を組み、同人が航海当直経験も豊富であったことから、船橋当直を単独で行わせることとし、出港後瀬戸内海を東行して、19時30分周防灘航路第6号灯浮標付近で同人と当直を交代した。
ところで、B指定海難関係人は、発航前の数日間積荷役がなく、関門港での停泊待機の状態が続き、数日振りに夜間航海に従事することとなって生活環境の急な変化に伴い、夜間当直を行うにあたって居眠りに陥りやすい状況となっていた。
A受審人は、B指定海難関係人がこれまで居眠り運航をしたことがなかったことから、当直交代にあたり運航上の指示を格別行うまでもないと思い、眠気を覚えたときには船長に報告するよう指示を徹底することなく降橋して休息した。
B指定海難関係人は、当直交代後クダコ水道西口にある二子瀬戸に向け平郡水道を東行し、23時29分半根ナシ礁灯標から099度(真方位、以下同じ。)1,780メートルの地点で、愛媛県クダコ島東方の部屋ノ瀬戸を通航するため、針路を070度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの0.6ノットの南西流に抗して、9.0ノットの対地速力で進行した。
定針したころ、B指定海難関係人は、船橋の舵輪後部の背もたれ付き椅子に腰掛けた姿勢で足下に電気ストーブを点けて暖をとりながら当直にあたり、23時40分クダコ島灯台から221度1.3海里の地点に達したとき、針路を054度に転じ、そのころから増勢した南西流により、右方へ9度圧流されながら8.0ノットの対地速力で中島南西岸に向け続航中、このころから航行の支障となる他船が見当たらなくなり、特別の疲労、睡眠不足はなかったものの、視界もよく、2.5海里前方の部屋ノ鼻灯台も視認していたことから、気が緩み、しばらくぶりの夜間航海ということもあってか眠気を感じ、このまま当直を続ければ居眠り運航に陥るおそれがあったが、当直交代まであと少しだから何とか我慢できるものと思い、船長に報告しないまま続航するうち、いつしか居眠りに陥った。
B指定海難関係人は、23時52分クダコ島灯台を左舷側に航過し、部屋ノ瀬戸に向ける転針点に差し掛かったが、依然、居眠りしていてこのことに気付かず、中島南西岸に向首して進行中、共和丸は、23時55分部屋ノ鼻灯台から183度250メートルの同島南西岸に原針路、原速力まま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の西南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で付近には2.1ノットの南西流があった。
A受審人は、自室で休息中、衝撃を感じて目覚め、急ぎ昇橋して事後の措置にあたった。
乗揚の結果、船首船底に破口を伴う凹損を生じ、満潮を待ってサルベージ船の援助により離礁し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、伊予灘を東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、中島南西岸に向首進行したことによって発生したものである。
共和丸の運航が適切でなかったのは、船長が無資格者に船橋当直を任せる際、眠気を覚えたときには報告するよう指示を徹底しなかったことと、同当直者が眠気を覚えたとき船長に報告しなかったこととによるものである。

(受審人等の所為)
A受審人は、夜間、伊予灘を東行中、無資格者に船橋当直を任せる場合、居眠り運航に陥らないよう、船橋当直を引き継ぐにあたり、眠気を覚えたときには報告するよう指示を徹底すべき注意義務があった。しかるに、同人は、当直者の居眠り運航防止について、運航上の指示を格別行うまでもないと思い、眠気を覚えたときには報告するよう指示を徹底しなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、中島南西岸に向首進行して乗揚を招き、共和丸の船首船底部に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人は、夜間、伊予灘を東行するにあたり、単独で船橋当直中、眠気を覚えた際、船長に報告しなかったことは本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては、勧告しない。

よって主文のとおり裁決する。






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