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1999年(平成11年)

平成10年長審第63号
    件名
漁船松宝丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年3月8日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

原清澄、保田稔、坂爪靖
    理事官
小須田敏

    受審人
A 職名:松宝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
舵とプロペラに曲損、右舷外板及び船底外板に擦過傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年3月2日20時40分
長崎県西彼杵郡崎戸島南方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船松宝丸
総トン数 6.3トン
登録長 12.92メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120
3 事実の経過
松宝丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、あじなどを釣る目的で、船首0.55メートル船尾1.40メートルの喫水をもって、平成9年3月2日17時長崎県西彼杵群西海町横瀬船溜(だま)りを発し、19時同県西彼杵郡崎戸島南方沖合の、御床島灯台から 138度(真方位、以下同じ。)2,040メートルの漁場に至って錨泊し、あじ数匹を獲たのち、釣果が思わしくないので、佐世保港口付近の洗出シノ瀬に移動することにして揚錨を始め、20時30分揚錨を終えた。
揚錨後A受審人は、漂泊しながら漁具の収納作業を開始したところ、折からの風潮流によって次第に南南東方に圧流されるようになったが、数十年来操業している海域でもあり、風潮流に圧流されて乗り揚げるなどの事故もなかったので、大して圧流されることはあるまいと思い、レーダーなどで船位の確認を行うことなく、芋島から拡延する浅礁の西端付近に著しく接近する状況になったことに気付かないまま漂泊を続け、漁具の収納作業を終えたあと小用を済ませ、その後、たばこを一本吸ったのち、20時39分わずか前2キロワットの集魚灯を消して法定灯火を点灯し、目が暗闇(くらやみ)に慣れないまま、自船の舵輪が右舷側にあったところから、右舷側から肉眼で浅礁を確かめようと舵を右舵一杯とし、機関を極微速力前進にかけ、3.0ノットの対地速力として手動操舵で回頭中、20時40分松宝丸は、その船首が南南西方を向いたとき、御床島灯台から139度2,200メートルの浅礁に船尾部を乗り揚げ、その後、風潮流のため船首が風下に落とされ、南東方を向いて間もなく停止した。
当時、天候は曇で風力4の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、視界は良好であった。
乗揚の結果、舵とプロペラに曲損を生じ、右舷外板及び船底外板に擦過傷を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、長崎県西彼杵郡崎戸島南方沖合において、揚錨したのち、漁具の収納作業などを行うために漂泊中、船位の確認が不十分で、芋島西南西方の浅礁に向けて発進したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、長崎県西彼杵郡崎戸島南方沖合の漁場において、漁場を移動しようとして揚錨したのち、漂泊しながら漁具の収納作業などを行う場合、付近には芋島から拡延する浅礁が存在していたから、折からの風潮流で圧流されて同浅礁に著しく接近することのないよう、レーダーで船位を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、風潮流による圧流の程度は大したことはあるまいと思い、船位確認しなかった職務上の過失により、芋島西南西方の浅礁に著しく接近していることに気付かないまま、機関を極微速力前進にかけて右舵一杯とし、同浅礁への乗揚を招き、舵及びプロペラに曲損を、右舷側外板及び船底部外板に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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