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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年仙審第10号
    件名
漁船第七十五漁安丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年7月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

上野延之、高橋昭雄、内山欽郎
    理事官
黒田均

    受審人
A 職名:第七十五漁安丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
B 職名:第七十五漁安丸一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
球状船首部に破口を伴う損傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年1月5日19時50分
宮城県塩釜港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第七十五漁安丸
総トン数 279トン
全長 59.42メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,912キロワット
3 事実の経過
第七十五漁安丸(以下「漁安丸」という。)は、遠洋底びき網漁に従事する鋼製漁船で、A、B両受審人ほか18人が乗り組み、平成9年11月15日20時40分北海道釧路港を出航し、ベーリング海の漁場に至って操業を行い、約330トンを漁獲し、水揚げの目的で、船首4.0メートル船尾7.5メートルの喫水をもって、翌12月31日同漁場を発し、塩釜港仙台区(以下「仙台区」という。)に向かった。
ところで、仙台区には、塩釜港仙台南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)から130度(真方位、以下同じ。)1,100メートルの地点から065度方向に長さ1,230メートルの沖防波堤が築造工事中のため、南防波堤灯台から141度800メートル(イ点)、イ点から154度400メートル(ロ点)、ロ点から065度1,780メートル(ハ点)、ハ点から286度600メートル(ニ点)の各点を結ぶ線で囲まれる航泊禁止区域が設けられ、ハ及びニ両点には、灯色緑色、灯質3秒間に1閃光の塩釜港仙台沖防波堤C仮設灯浮標(以下、仮設灯浮標の名称中「塩釜港仙台沖防波堤」を省略する。)及び同色同灯質のD仮設灯浮標並びに沖防波堤北東端に灯色黄色、灯質4秒間に1閃光の標識灯が設置されていたものの、同標識の黄色灯火及び仮設両灯浮標の緑色灯火は、陸岸を背景に視認するとき、背景の東北電力株式会社の明かりに紛れて見難く、レーダーの有効な活用による船位の確認を行わないとそれらを見落としたまま沖防波堤に接近するおそれがあった。
また、南防波堤灯台から107度2.8海里に塩釜港仙台第2号灯浮標(以下、番号付き灯浮標の名称中「塩釜港仙台」を省略する。)、同灯浮標南西方500メートルに第1号灯浮標、第2号灯浮標北西方向に400から500メートル間隔で紅灯を装備した5個の灯浮標、その先に第4号灯浮標、更に同灯浮標西方向に350から700メートル間隔で紅灯を装備した5個の仮設灯浮標及び灯浮標が順次設置されており、それらの灯浮標に沿って航行すれば航泊禁止区域を避けて航行できるようなっていた。
A受審人は、3ないし4年前、仙台区に入航したことがあったので、仙台区の各灯浮標が設置され、沖防波堤が築造工事中であり、沖防波堤を避けて航行しないと乗り揚げる危険があることを十分承知していたので、夜間、仙台区への入航に当たっては、第1号、第2号両灯浮標間中央から沖防波堤北東端に向かい、同北東端の黄色の標識灯を認めてから同灯を左方に見て同北東端をつけ回して西航し、仙台区に入航することにしていた。
越えて平成10年1月5日08時00分A受審人は、船橋当直(以下「当直」という。)を自ら、一等航海士、甲板長及び甲板手2人の各当直に甲板員1人を入直させて3時間輪番制としていたが、乗組員が水揚げ準備作業に当たることから当直に就き、17時00分宮城県金華山東方沖合でB受審人と食事交替をして降橋したが、食事後再び昇橋してB受審人をそのまま補佐に当てて自ら当直に就いた。
19時19分半A受審人は、南防波堤灯台から121度5.8海里の地点で、針路を310度に定め、機関を全速力前進から徐々に落としながら平均11.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
19時25分A受審人は、南防波堤灯台から119度4.8海里に達し、仙台沖灯浮標を左舷正横に300メートル離して航過したとき、乗組員を入航配置に就けて続航した。
19時36分少し過ぎA受審人は、第1号、第2号両灯浮標間中央の、南防波堤灯台から110度2.8海里の地点に達したとき、機関を8.0ノットの半速力前進とし、針路を沖防波堤北東端に向く298度に転じ、手動操舵に切り替えて進行した。
19時41分少し過ぎB受審人は、南防波堤灯台から108度2.1海里の地点で、船橋前面中央の窓を開けて見張りをしながら補佐に当たっていたが、前年、他船で仙台区に入航した際、右舷方の各紅灯灯浮標の近くをこれに沿って航行したことがあり、今回も同様に航行するものと思っていたところ、それらの灯浮標から離れたので、A受審人に対してその旨の報告をしたが、A受審人がそのまま航行したので安全に入航できるものと思い、直ちに自らレーダーにより船位を確認して報告するなど船長補佐を十分行うことなく、見張りを続けた。
A受審人は、右舷方の各紅灯灯浮標から離れ、沖防波堤北東端の黄色の標識灯も背景の陸の明かりに紛れて見難い状況で、更にB受審人からそれらの灯浮標から離れた旨の報告を受けたものの、沖防波堤北東端の黄色の標識灯を認めてから同灯を左方に見て同北東端をつけ回して西航すれば安全に入航できるものと思い、自らレーダーの有効な活用による船位の確認を十分に行うこともB受審人に同確認を指示することもしなかった。
19時48分A、B両受審人は、南防波堤灯台から102度1.3海里の地点に達したとき、右舷前方間近に沖防波堤北東端の黄色の標識灯が点灯していたが、背景の陸岸の明かりによりこれに気付かないまま沖防波堤北東端に向首進行し、同時50分わずか前A受審人が、船首部で入航準備作業をしていた甲板部員の叫び声を聞き、機関を全速力後進にかけたが及ばず、19時50分漁安丸は、南防波堤灯台から098度1,820メートルの地点において、その船首が沖防波堤北東端部消波ブロックに原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力3の南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
乗揚の結果、漁安丸は球状船首部に破口を伴う損傷を生じたが、引船の救援をえて引き下ろされ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、仙台区に入航する際、船位の確認が不十分で、沖防波堤北東端に向首進行したことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは、仙台区に入航中、船長が船位の確認を十分に行わなかったうえ、船橋当直中の航海士に船位を確認するよう指示しなかったことと、船橋当直中の航海士が船位を確認して報告するなど船長補佐を十分に行わなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、仙台区に入航する場合、右舷方の各紅灯灯浮標から離れ、沖防波堤北東端の黄色の標識灯も背景の陸の明かりに紛れて見難い状況で、更に船橋当直中の航海士から右舷方の各紅灯灯浮標から離れた旨の報告を受けたから、沖防波堤の北東端部消波ブロックに乗り揚げないよう、レーダーの有効な活用による船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、沖防波堤北東端の黄色の標識灯を認めてから同灯を左方に見て同北東端をつけ回し、西航すれば安全に入航できるものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同沖防波堤北東端に向首進行し、同北東端部消波ブロックヘの乗揚を招き、自船の球状船首部に破口を伴う損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、夜間、仙台区に入航中、右舷方の各紅灯灯浮標から離れた場合、直ちに自らレーダーにより船位を確認して報告するなど船長補佐を十分行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、船長がそのまま航行したので安全に入航できるものと思い、船長補佐を十分に行わなかった職務上の過失により、沖防波堤北東端部消波ブロックヘの乗揚を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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