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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成仙審第29号
    件名
漁船第十正栄丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年1月21日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

高橋昭雄、安藤周二、供田仁男
    理事官
黒田均

    受審人
A 職名:第十正栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
バルバスバウを折損して左舷船首部外板に破口

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月3日06時00分
青森県八戸港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十正栄丸
総トン数 19トン
登録長 18.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 478キロワット
3 事実の経過
第十正栄丸は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか甲板員1人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾2.7メートルの喫水をもって、平成9年9月2日15時00分八戸港を発し、鮫角北東方17海里沖合の漁場に向かった。
ところで、A受審人は、八戸港を基地にして航程が短い同港沖合を漁場とし、平素15時ごろ出港して専ら夜間操業を行い翌朝08時ごろ帰港していた。その漁獲量が平均して1トン程度で比較的少ないものであったので、操業中の合間に適宜休息をとり、航程も短いことから単独で往復航の船橋当直も行っていた。
ところがA受審人は、2日前から一晩に約5トンを獲る大漁が続き、甲板員共々睡眠をとる時間を割いて操業にあたり、更に多量の漁獲物の箱詰め作業に追われ、また水揚げ後ば次の操業に備えての仕込みなどで休息を十分にとらない状態が続いていた。
こうして、A受審人は、17時ごろ漁場に至りシーアンカーを投下して直ちに操業を開始し、再び前日同様大漁となって甲板員共々ほとんど休息をとらずに操業を続けた。翌3日未明操業を打ち切り、いか約5トンを獲て引き続きシーアンカーを回収して漁獲物の箱詰め作業に取り掛かった。
05時00分A受審人は、一連の漁場での作業を終了したときには、操業開始時から南寄りの海流の影響を受けて、鮫角灯台から027度(真方位、以下同じ。)9.2海里の地点に達しており、針路を214度に定め、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速方で自動操舵により八戸港に向けで帰途に就き、いつものように単独で船橋当直にあたり、甲板員には甲板上の後片付け作業に続き食事の準備を行わせた。
ところで、A受審人は、連日の大漁により休息不足の状態であったことから、すでに操業中から眠気を感じ、帰航開始直後の単独当直に就いたとき、操業終了後の安堵感もあって一層疲労と眠気を催すようになっていたが、基地まで約2時間の短い航程であったので、そのまま単独で当直を続けることにした。
しかし、A受審人は、疲労と眠気を催した状態にもかかわらず、立直し冷気に当たるなどして眠気を払い更に努めて気を引き締めて当直にあたることなく、他船の接近を知ることができるようにレーダーの自動衝突予防援助装置の警報を1.5マイルに設定することによって、船橋後部床に横になった姿勢でレーダーに頼って当直にあたり、同警報が鳴るたびに立ち上がってはこれを確かめ、他船が遠ざかるのを確認すると再び横になってレーダーによる見張りを行いながら続航した。
05時48分鮫角灯台から358度2.2海里の地点で、レーダーで八戸港港外の防波堤まで約2海里に接近しこれに向首していることを知ったころ、出航してくる漁船に反応して頻繁に鳴る同警報を止め、もう少し港に近づいてから入港針路に転ずるつもりで、引き続き横になった姿勢で当直を続けているうちに居眠りに陥り、06時00分八戸港白銀北防波堤灯台から009度950メートルの地点において、八戸港白銀北防波堤の沖合防波堤東側端に設置された消波ブロックに原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は雨で風力2の南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、バルバスバウを折損して左舷船首部外板に破口を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、八戸港を基地に同港北東方沖合で夜間操業を終えて早朝帰航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、疲労と睡眠不足の状態にもかかわらず船橋床上に横になり緊張を欠いた姿勢で当直にあたっているうち居眠りに陥り、港外の防波堤に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、八戸港を基地に夜間操業を行って早朝単独で当直して帰航する場合、連日の大漁続きで疲労と睡眠不足の状態であったから、基地まで短い航程であったとはいえ居眠り運航に陥らないよう、立直し冷気に当たって眠気を払い更に努めて気を引き締めて当直にあたるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、疲労と睡眠不足の状態にもかかわらず立直し冷気に当たって眠気を払い更に努めて気を引き締めて当直にあたるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、船橋床上に横になり緊張を欠いた姿勢で当直を続けて居眠りに陥り、港外の防波堤に向首したまま進行して同防波堤端の消波ブロックヘの乗揚を招き、船底外板に破口を生じて浸水させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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