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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年広審第58号
    件名
貨物船八栗丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年広審第58号

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

釜谷獎一、上野延之、横須賀勇一
    理事官
川本豊

    受審人
A 職名八栗丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
B 職名八栗丸機関長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
左舷中央部船底に破口及び凹損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月4日13時30分
岡山県水島港付近
2 船舶の要目
船種船名 貨物船八栗丸
総トン数 284トン
全長 43.89メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 551キロワット
3 事実の経過
八栗丸は、専ら瀬戸内海塩飽瀬戸で早朝採取した海砂を水島、岡山、玉島及び坂出各港に輸送して日中陸揚げし、香川県直島港に夕刻帰港する日帰り運航の砂利採取運搬船で、A及びB両受審人ほか1人が乗り組み、空倉で、船首0.6メートル船尾2.9メートルの喫水をもって、平成9年9月4日12時56分水島港を発し、直島港に向かった。
A受審人は、出港後、単独で船橋当直に就くB受審人に対して同人が父親であり乗船履歴も長く船長経験もあったことから、船橋当直中の注意について、特に指示するまでもないと思い、眠気を催したら報告するよう指示することなく、同当直を同人に引き継いで降橋して休息した。
ところで、B受審人は、夜よく眠れず、糖尿病で夜中に時々起きるので連日眠りが浅い状態が続き、毎朝03時30分ごろには起床し、出港まで十分な休息がとれずに就労し、睡眠不足の状態であった。
こうしてB受審人は、船橋当直を引き継いだのち、操舵輪後方の肘掛けいすに腰掛けて見張りに当たり、13時19分六口島灯標から357度(真方位、以下同じ。)1.8海里の地点に達したとき、針路を西ノ埼の南西方約350メートル沖合に向く144度に定めて手動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、折からの順潮流に乗じて9.7ノットの対地速力で進行した。
B受審人は、13時22分ごろ六口島灯標から007度1.5海里の地点に達したころ、天気も良く、海上も穏やかなことから気が緩み、睡眠不足により眠気を催すようになったが昼間であり、これまで居眠り運航をしたことがなかったことから、この程度なら我慢できると思い、居眠り運航の防止措置として、A受審人に報告して昇橋を求めることなく、いすに腰掛けて操舵するうち、いつしか居眠りに陥り、下津井瀬戸に近づくにつれて強まる東流により徐々に左方に圧流されて、西ノ埼北西方の陸岸に著しく接近する態勢で進行中、同時29分六口島灯標から057度1.0海里の地点に達し、陸岸に向首進行していたが、このことに気付かずそのままの針路で続航中、八栗丸は、13時30分六口島灯標から065度1.1海里の陸岸に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、乗揚地点付近には約1ノットの東流があった。
A受審人は、乗揚の衝撃で昇橋し、事後の措置に当たった。
乗揚の結果、八栗丸は左舷中央部船底に破口及び凹損を生じ、のち満潮時サルベージにより離礁し修理された。

(原因)
本件乗揚げは、水島港三菱セメント岸壁を離岸して下津井瀬戸に向かって航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、陸岸に向首進行したことによって発生したものである。
八栗丸の運航が適切でなかったのは、船長が船橋当直者に対し眠気を催した際には、報告するよう指示しなかったことと、船橋当直者が眠気を催した際、船長に報告して昇橋を求めなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
A受審人が、部下に船橋当直を行わせる場合、当直者が居眠り運航とならないよう、眠気を催した際の報告を指示すべき注意義務があった。しかるに、A受審人は、B受審人が父親であり乗船履歴も長く船長経験もあったことから船橋当直中の注意について、特に指示するまでもないと思い、眠気を催したときには、報告するよう指示しなかった職務上の過失により、居眠り運航の防止措置がとられないまま進行して居眠り運航となり、陸岸に向首進行して乗揚を招き、左舷中央部船底に破口等の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、水島港内の岸壁を離岸し単独で船橋当直に当たり航行中、眠気を催した場合、居眠り運航にならないよう、居眠り運航の防止措置として、A受審人に報告して昇橋を求めるべき注意義務があった。しかるに、B受審人は、この程度なら我慢できると思い、A受審人に報告して昇橋を求めなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、陸岸に向首進行して乗揚を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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