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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年函審第59号
    件名
漁船第五十三平安丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年1月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

米田裕、大山繁樹、古川隆一
    理事官
熊谷孝徳

    受審人
A 職名:第五十三平安丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底外板及びキールに凹損等

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年12月18日22時40分
北海道襟裳岬付近
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十三平安丸
総トン数 9.7トン
登録長 13.87メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120
3 事実の経過
第五十三平安丸(以下「平安丸」という。)は、刺網漁業に従事するアルミニウム合金製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、操業の目的をもって、船首1.0メートル船尾2.0メートルの喫水で、平成9年12月18日08時00分北海道幌泉郡えりも港を発し、襟裳岬南南西方沖合20海里ばかりの漁場に向かった。
ところで、平安丸の11月末から2月末にかけての操業は、かれいの刺し網漁を行い、漁場で数日前に投入しておいた刺し網を揚収したあと、準備していた別の刺し網を投入するというもので、漁場には常時数日分の刺し織が投入されており、A受審人は、朝出漁して夜遅く帰航することが多く、漁場までの往復の船橋当直及び漁場における操船を自らが単独で行い、このところ天気が良くなぎの日が続き、休漁日がないまま連日出漁を続けていたことから疲労が蓄積している状態であった。
A受審人は、漁場に至って操業を行い、20時00分かれい、すけとうだらなど約1トンを漁獲して操業を終え、同時37分襟裳岬灯台から192度(真方位、以下同じ。)19.7海里の漁場を発し、えりも港に向けで帰航の途に就いた。
A受審人は、単独で船橋当直に就き、漁場発進と同時に針路をGPSプロッターによりえりも港南南西方沖合にあった定置網の一端である幌泉灯台から202度2.5海里の地点に向首する357度に定め、機関を全速力前進にかけて対地速力11.0ノットとし、操舵室左舷側に置いていた椅子兼物入れに腰掛けて、折からの潮流により右方に4度圧流されながら自動操舵により北上した。
22時ごろA受審人は、レーダーを監視していたところ、右舷船首45度6海里ばかりに襟裳岬沖から西方に向かう航行船の映像を認め、自動衝突予防援助装置により捕捉した結果、同船は自船の前路3海里を横切るという計算結果を表示したのでそのままの針路で進行し、このころから連日の操業と長時間にわたる船橋当直の疲れにより眠気を覚えたものの、えりも港まであと少しなので我慢できるものと思い、前部甲板で網にかかった魚の取外し作業を行っていた乗組員を昇橋させて2人当直とするなどの居眠り運航を防止する措置を何らとることなく、椅子兼物入れに腰掛けたまま続航しているうちにいつしか居眠りに陥った。
こうして、平安丸は、22時24分襟裳岬灯台を3.6海里離して航過し、えりも町四ツ谷埼南方の岩礁に向かって進行したが、A受審人が居眠りに陥ったままこのことに気付かずに続航中、22時40分幌泉灯台から165度2.3海里の四ツ谷埼南方の岩礁に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力2の西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、付近には0.7ノットの東流があった。
A受審人は衝撃で目覚め、乗り揚げたことを知り、事後の措置に当たった。
乗揚の結果、船底外板及びキールに凹損を生じたが、引船の支援を得て離礁し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、操業を終えて帰航するため北海道幌泉郡えりも港に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、えりも町四ツ谷埼南方の岩礁に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、漁場から地毎道幌泉郡えりも港に向けて襟裳岬南南西方沖合を単独で船橋当直に就いて航行中、連日の操業と長時間にわたる船橋当直の疲れから眠気を覚えた場合、前部甲板で魚の取外し作業を行っていた乗組員を昇橋させて2人当直とすることなどの居眠り運航を防止する措置をとるべき注意義務があった。しかし、同受審人は、えりも港まであと少しなので我慢できるものと思い、居眠り運航を防止する措置を何らとらなかった職務上の過失により、椅子兼物入れに腰掛けたまま居眠りに陥り、えりも町四ツ谷埼南方の岩礁に向かっていることに気付かずに進行して乗り揚げを招き、船底外板及びキールに凹損等を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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