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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年函審第60号
    件名
漁船勝丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年1月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗、米田裕、古川隆一
    理事官
千手末年

    受審人
A 職名:勝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
前部船底外板に破口を生じて魚倉が浸水、引きおろし作業の際、船底外板全般を損壊、のち解撤

    原因
船橋を無人

    主文
本件乗揚は、船橋を無人としたことによって発生したものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月31日03時30分
北海道恵山岬東岸付近
2 船舶の要目
船種船名 漁船勝丸
総トン数 9.88トン
登録長 14.59メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120
3 事実の経過
勝丸は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的をもって、平成10年8月30日15時00分北海道椴法華港を発し、同港北方沖合の漁場に至って操業を行った。
翌31日01時04分A受審人は、いか約1.8トンを漁獲して操業を切り上げ、船首0.8メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、恵山岬灯台から005度(真方位、以下同じ。)17.6海里の地点を発進して針路を恵山岬灯台をやや左方に見る187度とし、7.0ノットの対地速力で自動操舵により、椴法華港に向けて帰途に就いた。
A受審人は、漁場発進後オーニングを施した前方が見えない前部甲板に赴き、船橋を無人としていかの箱詰め作業を行っていたところ、01時38分船の旋回に伴い急に傾斜したことから自動操舵が故障したことを知り、船橋に戻って操舵を手動に切り替え、自動操舵の具合を調べながら進行した。
02時50分A受審人は、恵山岬灯台から003度5.1海里の地点に達したとき、自動操舵が可能になったので、椴法華港入口の北方に設置された定置網の標識灯付近に向けるつもりで操舵を自動に切り替えたところ、同灯より5度ばかり左方を向いた187度の針路となっていたが、残っていたいかの箱詰めを急ぐあまり、針路設定状況の確認をしなかったので、このことに気付かないまま、折からの南東流により左方へ5度圧流され、7.9ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、針路を定めたとき椴法華港の防波堤入口付近まで4.5海里ばかりとなっていたが、いかの箱詰めにとりかかっても同港の防波堤入口付近達する前に同作業は終わるものと思い、在橋して当直業務に専念することなく、定針後間もなく再び船橋を離れ、前部甲板に赴いていかの箱詰めに取りかかった。
03時21分A受審人は、恵山岬の北右1海里ばかりの、恵山岬灯台から007度1.2海里の地点に達し、恵山岬東岸の浅礁域に向かっていたが、船橋を無人にしていたことから、このことに気付かず、椴法華港の防波堤入口に向けるための転針が行われないまま、同一針路、同一速力で進行中、03時30分勝丸は、恵山岬灯台から165度600メートルの岸近くの浅礁に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力2の南東風が吹き、潮侯は低潮時で、0.9ノットの南東流があった。
乗揚の結果、前部船底外板に破口を生じて魚倉が浸水し、クレーン船で引きおろし作業の際、船底外板全般を損壊して燃料の重油800リットルが流出し、船体は椴法華港に引き付けられたが、のち解撤された。

(原因)
本件乗揚は、北海道恵山岬北方沖合の漁場から椴法華港に向けて航行中、船橋を無人とし、転舵時機を失して、浅礁水域に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、北海道恵山岬北方沖合の漁場から椴法華港に向けて1人で船橋当直に就いて航行する場合、転舵時機を失して浅礁に乗り揚げることのないよう、船橋を無人にしないようにすべき注意義務があった。
しかるに、同人は、同港防波堤入口近に達するまでに、前部甲板上でのいかの箱詰め作業を終えることができると思い、船橋を無人とした職務上の過失により、恵山岬東岸の浅礁水域に向かっていたことに気付かないまま進行し、同岸の浅礁に乗り揚げ、前部船底外板に破口を生じさせ、重油の流出を招くに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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