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1999年(平成11年)

平成10年那審第58号
    件名
漁船第三清和丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年5月20日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

清重隆彦、金城隆支、花原敏朗
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:第三清和丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底に破口を生じて機関室に浸水

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年9月12日15時40分
鹿児島県横当島
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三清和丸
総トン数 4.57トン
全長 11.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 36キロワット
3 事実の経過
第三清和丸(以下「清和丸」という。)は、FRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、さわら引き縄漁の目的で、船首0.8メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、平成10年9月8日03時00分鹿児島県名瀬港を発し、同県横当島周辺の漁場に向かい、08時ごろ同漁場に着いた。
到着後、A受審人は、50メートルばかりの引き縄を先端に取り付けた長さ約8メートルの竿を、両舷に1本ずづ張り出し、約6ノットの引き縄速力で漁を開始し、夜間は島陰で仮泊して休息を取り、繰り返し操業を行った。
A受審人は、同月12日11時ごろ強い北東風を避け横当島西岸沖合で投錨して休息したのち、14時20分同地を発し、6.0ノットの対地速力で、同島沿岸から北右の上ノ根嶼沖合にかけて引き縄漁を行ったものの、全く釣れなかったので引き返すこととし、15時20分横当島234メートル頂から359度(真方位、以下同じ。)3,940メートルの地点で、針路を同島中央部に向首する192度に定め、引き縄を引いたまま同じ速力で、操舵室内の椅子代わりにしていた横板に腰を掛け、遠隔操舵により進行した。
15時33分A受審人は、全く漁獲がなく気落ちしていたことに加え、漁場を移動中で魚が釣れる海域ではなかったことから気が緩み、眠気を催した。しかし、同人は、、間もなく横当島付近の漁場に到達し針路を変えなければならないので、まさか居眠りに陥ることはあるまいと思い、居眠り運航とならないよう、立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航防止の措置をとらず、腰を掛けたままで見張りに当たっていたところ、いつしか居眠りに陥った。
清和丸は、横当島北岸に向首したまま原針路、原速力で続航し、15時40分横当島234メートル頂から289度880メートルの海岸に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力4の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果、船底に破口を生じて機関室に浸水したが、僚船により引き降ろされて名瀬港に引き付けられた。

(原因)
本件乗揚は、鹿児島県横当島北方海域で、引き縄を引いたまま漁場を移動中、居眠り運航の防止措置が不十分で、横当島北岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、鹿児島県横当島北方海域で、引き縄を引いたまま漁場を移動中、眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった、ところが、同人は、間もなく横当島付近の漁場に達し針路を変えなければならないので、まさか居眠りすることはあるまいと思い、立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠り運航となって横当島北岸に乗り揚げ、船底に破口を生じさせ、機関室に浸水させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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