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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年門審第99号
    件名
貨物船第拾八富栄丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年5月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

阿部能正、供田仁男、西山烝一
    理事官
伊東由人

    受審人
A 職名:第拾八富栄丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
B 職名:第拾八富栄丸一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
沈没して全損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
なお、船体が全損となったのは、船長が、離礁後、船体の安全確認を十分に行わないまま航行したことによるものである。
受審人Bの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年2月11日02時30分
九州東岸沖合
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第拾八富栄丸
総トン数 465トン
全長 65.52メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第拾八富栄丸(以下「富栄丸」という。)は、鋼製砂利石材運搬船で、A、B両受審人ほか2人が乗り組み、土砂1,290トンを積載し、船首3.6メートル船尾4.8メートルの喫水をもって、平成10年2月10日07時10分兵庫県湊港を発し、鹿児島県志布志港に向かった。
ところで、A受審人は、船橋当直を自らを含め、B受審人及び甲板長による単独の4時間3直制としていたところ、甲板長が出航前に急に転船したことから両受審人が6時間ずつ単独で行うこととした。
A受審人は、瀬戸内海を経由して進行し、23時00分ごろ愛媛県見舞埼沖合に差し掛かったとき、B受審人に当直を引き継ぎ、自室で休息した。
その際、A受審人は、B受審人に対して針路、速力、潮流の状況及び船位を申し継いだものの、同人が有限会社Rの社長で経営責任を担っている当人であり、船長経験も長く、また発航地で2日あまり停泊して十分な休息時間があったことと、通常具合が悪い事があるときは連絡があったことから、当直中の居眠りについて予想し得ないところであった。
翌11日00時00分B受審人は、佐田岬灯台から266度(真方位、以下同じ。)1.2海里の地点に達したとき、釧路を166度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて9.1ノットの対地速力で続航し、01時39分高甲岩灯台から119度2.1海里の地点で、大島と先ノ灘澗との狭い水道を通航するつもりで、針路を1度右は転じて167度とし、先ノ瀬灯台の灯火を目標に進行した。
B受審人は、操舵室中央部の舵輪の後方に設置したひじ掛けいすに腰掛けて当直を続けていたところ、いつも散在している漁船が見当たらず、通航船もないことから気が緩み、眠気を感じるようになったが、居眠りすることはあるまいと思い、いすから立ち上がって船橋の外へ出るなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、続航し、やがて居眠りを始めた。
富栄丸は、B受審人が居眠りに陥ったまま先ノ瀬の手前にある舵掛頼に向首接近する状況で進行し、02時30分先ノ瀬灯台から299度200メートルの舵掛瀬に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の南西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
A受審人は、衝撃を感じて昇橋し、事後の措置に当たったところ、乗揚により、富栄丸の船首船底に破口及び亀裂を生じて、船首水倉及び二重底に浸水していることが分かったが、貨物を移動するなどして04時00分自力離礁したことから、排水しながら目的地に向かうこととし、まもなく機関を半速力にかけて南下した。05時50分ごろA受審人は、大分県深島東方沖合3海里の地点に達したとき、前にも増して船首がかなり沈下しているのを認め、機関を停止して点検したところ、浸水量が増大して多量の海水が甲板長倉庫及び船首側空所に流入していることを知った。しかしながら、同人は、排水ながらなんと航行きるものと思い、最寄りの港に寄せるなどして船体の安全確認を十分に行うことなく、目的地に向かうことを断念して徳島県那賀郡那賀川町にある造船所に向かって航行することとし、06時00分同地点を発し、機関を微速力にかけて四国南岸沖合を東行した。
富栄丸は、その後四国南東岸沖合を北上中、南西の風波が増勢したことから浸水量が更に増大して浮力を喪失し、翌12日06時48分出羽島灯台から113度11.4海里の地点において、沈没して全損となり、乗組員は全員小松島海上保安部の巡視艇に救助された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、速吸瀬戸から九州東岸沖合を南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、先ノ瀬北方に存在する舵掛瀬に向首する針路のまま進行したことによって発生したものである。
なお、船体が全損となったのは、船長が、離礁後、最寄りの港に寄せるなどして船体の安全確認を十分に行わないまま航行したことによるものである。

(受審人の所為)
B受審人は、夜間、速吸瀬戸から九州東岸沖合を南下中、1人で船橋当直に当たり、眠気を感じた場合、いすに腰掛けたままの姿勢を続けていれば居眠りに陥り、居眠り運航となるおそれがあったから、いすから立ち上がって船橋の外へ出るなど、居眠り運行の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、当直中居眠りに陥り、舵掛瀬に向首する針路のまま進行して乗揚を招き、船首船底に破口及び亀裂を生じて船首水倉、二重底に浸水させたうえ、のち海水を甲板長倉庫及び船首側空所に多量に流入させるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法4条第2項の規定により、同法第5条第1項2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
A受審人は、乗揚離礁後、船底に破口を生じて船首水倉や二重底に浸水していることが分かり、排水しながら目的地に向けて南下中、前にも増して船首がかなり沈下していることを認め、再度点検したところ、浸水量が贈大して多量の海水が甲板長倉庫及び船首側空所に流入していることを知った場合、そのまま航行を続ければ更に浸水量が増大して浮力を喪夫させる危険があったから、沈没に至ることのないよう、最寄りの港に寄せるなどして確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、排水しながらなんとか航行できるものと思い、最寄りの港に寄せるなどして船体の安全確認を十分に行わなかった職務上の過失により、そのまま航行を続け、浸水量を増大させて浮力を喪失させ、富栄丸を沈没させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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