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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年神審第102号
    件名
貨物船第一鋼運丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年9月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

佐和明、工藤民雄、米原健一
    理事官
橋本學

    受審人
A 職名:第一鋼運丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首部船底に亀裂を伴う凹損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航防止の措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年2月12日23時20分
友ケ島水道加太瀬戸
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第一鋼運丸
総トン数 443トン
全長 70.93メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第一鋼運丸は、主に大阪港と京浜港との間で鋼材の輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、鋼材1,148トンを載せ、船首3.20メートル船尾4.60メートルの喫水をもって、平成9年2月12日20時30分大阪港を発し、京浜港東京区に向かった。
これより先の11日夜遅く、A受審人は、京浜港から大阪港の港外に至って投錨仮泊し、翌12日07時30分まで自室で休息をとったのち抜錨して同港大阪区第8区の岸壁に付け、08時00分から発航直前まで揚荷役及び積荷役の当直に従事していた。
こうして、A受審人は、発航操船に引き続き5時間の予定で単独の船橋当直に当たり、操舵室の窓と扉を閉め、暖房を効かせた状態で操舵スタンド後部に置いたいすに腰掛けて見張りを行い、自動操舵のまま何隻かの航行船を避航しながら大阪湾を友ケ島水道加太瀬戸に向けて南下し、22時20分関西国際空港沖合の、地ノ島灯台から034度(真方位、以下同じ。)10.5海里の地点に達したとき、針路を同灯台に向く214度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.5ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、朝からの長時間にわたる就労による疲れのうえ、定針したころから前路に航行船や漁船の灯火も見当たらなくなり、深夜、暖房を効かせた船橋において、単独でいすに腰掛けたまま慣れた海域を刺激の少ない状態で見張りを続けていると、気が緩んで居眠りするおそれがあったが、当時睡眠不足の状態ではなく、眠気も覚えていなかったことから、居眠りすることはないと思い、いすから離れて外気に当たったり、手動操舵に切り替えたりするなど、居眠り運航防止の措置をとることなく続航した。
23時ごろA受審人は、左舷正横付近に大阪府深日港にある火力発電所の照明を認め、間もなく地ノ島灯台の手前1海里の予定転針地点に達するので、そこから針路を加太瀬戸中央に向けるつもりでいたところ、いつしか居眠りに陥り、同時14分少し過ぎ転針地点に差し掛かったが、このことに気付かず、針路を転じることなく原針路、原速力のまま進行した。
こうして、第一鋼運丸は、23時20分地ノ島灯台から060度100メートルの地ノ島東端付近浅礁に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力3の北風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
乗揚の結果、船首部船底に亀裂を伴う凹損を生じたが、救助船によって引き下ろされ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、大阪湾を友ケ島水道加太瀬戸に向けて南下中、居眠り運航防止の措置が不十分で、同瀬戸西側の地ノ島東端に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独の船橋当直に就き、操舵室の扉と窓を閉めて暖房を効かせ、いすに腰掛けた状態で大阪湾を友ケ島水道加太瀬戸に向けて南下する場合、前路に航行船や漁船の灯火が見当たらなくなったとき、朝からの長時間にわたる就労による疲れや気の緩みから居眠りするおそれがあったから、居眠り運航にならないよう、いすから離れて外気に当たったり、手動操舵に切り替えたりするなど、居眠り運航防止の措置をとるべき注意義務があった。ところが、同人は、睡眠不足の状態でもないので居眠りすることはないと思い、いすに腰掛けたまま当直を続け、居眠り運航防止の措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、予定の転針を行うことができないまま、地ノ島東端に向け進行して浅礁に乗り揚げ、船首部船底に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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