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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年長審第80号
    件名
漁船和丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年5月20日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

原清澄、安部雅生、保田稔
    理事官
畑中美秀

    受審人
A 職名:和丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
舵板、プロペラ及びプロペラ軸曲損、船首部から中央部にかけて左舷側船底外板圧壊

    原因
転錨時機不適切

    主文
本件乗揚は、転錨時機が不適切で、陸岸に向けて走錨したことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年1月8日18時15分
長崎県西彼杵郡崎戸町平島東岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船和丸
総トン数 4.60トン
登録長 9.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
和丸は、専ら延縄漁に従事するFRP製漁船で、A受審人と同人の妻が乗り組み、かさごを獲る目的で、船首0.30メートル船尾1.20メートルの喫水をもって、平成10年1月4日07時00分長崎県久津漁港を発し、同日11時ごろ同県西彼杵郡崎戸町平島北東部にある平島漁港南風泊地区内に錨泊し、同所を操業の基地(以下「基地」という。)とし、かさご延縄漁の準備作業を行い、翌5日07時ごろ基地を発進し、基地から3.5海里ばかり東方の、魚瀬や小倉瀬などの瀬が存在する漁場(以下「漁場」という。)に向かい、同時30分ごろ漁場に至って操業を始めた。
ところで、A受審人は、自船が夜間においても船位を求めることができるレーダーなどの航海計器を一切装備していなかったので、昼間のみ操業に従事し、日没後には基地に戻り、錨泊して休息するようにしていた。
A受審人は、漁場で3日間操業してかさご約20キログラムを獲たのち、同月8日08時ごろ天気予報で接近する低気圧の影響により、その後、風向が北東に変わることを知り、前もって北東風を避けることができる泊地に移動することにし、同時30分基地を発進して平島西岸沿いに南下して平島南側のコモダ湾にいったん避難したが、強い南西風が収まらないまま吹き続け、船体の動揺も激しかったので、平島東岸の元ノ瀬北側の南西風を避けることができる泊地に向けて移動することにした。
12時30分ごろA受審人は、コモダ湾の泊地を発進し、平島南東岸沖合を経て13時00分ごろ平島灯台から074度(真方位、以下同じ。)3,150メートルの地点に至り、船首から自動25キログラムのストックアンカーを投下し、直径約1.8センチメートルのクレモナ製錨索を約40メートル繰り出して投錨作業を終え、錨泊を始めた。
投錨後A受審人は、操舵室で守錨当直にあたっていたところ、17時ごろ風向が急速に南西方から右回りで北方に変化したのを認め、その後、東方に変わる状況であるのを知ったが、目測で船位を確認したところ、走錨している様子もなかったので、風向が東に変わり、南西方からの波浪が少さくなってから転錨しても大丈夫と思い、速やかに安全な泊地に転錨することなく、風波が少し弱まった様に見えたので、操舵室で妻とともに夕食をとり始めた。
和丸は、18時ごろA受審人が食事を終えたのち、操舵室の床に横になり、しばし食後の休息をとっていたところ、急速に風向が東寄りに変わったため、船体が振れ回り、平島の東岸に向けて走錨し始め、18時15分平島灯台から072度2,850メートルの地点において、その船首をほぼ東に向けた状態で乗り揚げた。
当時、天候は雨で風力6の東風が吹き、潮候は高潮時で、強風波浪注意報が発表されており、波高2.5メートルばかりの東寄りの風波があり、日没は17時31分であった。
乗揚の結果、船体が左舷側に振れ、舵板、プロペラ及びプロペラ軸曲損のほか船首部から中央部にかけて左舷側船底外底圧壊などの損傷を生じたが、僚船の援助を得て離礁し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、長崎県西彼杵郡埼戸町平島東岸の泊地において、接近する低気圧による南西方からの風波を避けて錨泊中、転錨時機が不適切で、日没後、風向が変化し、陸岸に向けて走錨したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、長崎県西彼杵崎戸町平島東岸の泊地において、南西方からの風波を避けて錨泊中、接近する低気圧のため、風向が急速に右回りに変化し、いずれ東方からの風に変わるのを知った場合、レーダーなどの航海計器を装備せず、夜間においては船位を確認する手段がなかったのであるから、明るいうちに船位を確認しながら避難できるよう、速やかに安全な泊地に転錨すべき注意義務があった。しかるに、同人は、目測で船位を確認したときには走錨の事実を認めなかったので、風向が東に変わり、南西方からの波浪が小さくなってから転錨しても大丈夫と思い、速やかに安全な泊地に転錨しなかった職務上の過失により、日没後、走錨して平島東岸への乗揚を招き、舵板、プロペラ及びプロペラ軸曲損のほか、左舷側船底外板圧壊などを生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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