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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年函審第2号
    件名
漁船第52博春丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年4月21日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗、大山繁樹、米田裕
    理事官
千手末年

    受審人
A 職名:第52博春丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
全損、燃料のA重油が流出

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年7月29日01時25分
北海道花咲港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第52博春丸
総トン数 9.96トン
登録長 13.01メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120
3 事実の経過
第52博春丸(以下「博春丸という。)は、さんま棒受網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか4人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、平成9年7月28日15時00分北海道花咲港を発し、18時30分落石岬灯台から179度(真方位、以下同じ。)31.0海里の漁場に至り、機関を中立にして漂泊し、操業準備作業にとりかかった。
A受審人は、集魚灯用の発電機を始動したところ、主機と共用の冷却水の吸い上げが不調で、各部を点検したが原因が判明せず、洋上で修理はできないと判断して操業を断念のうえ、落石漁港で修理をすることとし、19時00分前示漂泊地点を発進し、針路を001度に定めて自動操舵とし、機関を冷却水の温度が上がらない半速力前進にかけて、6.0ノットの対地速力により進行した。
ところで、博春丸における操業は、魚市場の関係で土曜日の休漁を除いて毎日15時ごろ花咲港から出漁して18時半ごろ漁場に着いて操業を行い、翌日04時ごろ操業を終えて水揚げのため花咲港に帰航し、水揚げ後再びその日の15時ごろ出漁するものであり、この1週間程は連日の出漁であった。A受審人は、漁場が比較的近いところであったことから、往復の船橋当直をほとんど1人で行っていたほか、操業の指揮にも当たり、出漁中はほとんど休息がとれなかったばかりか、花咲港発航前に水揚げ後も雑用に追われてほとんど休息がとれなかったことから、疲労が蓄積した状態にあり、また、風邪もひいていて体調不十分であった。
発進後、A受審人は、操舵室左舷側の高床の上に置かれた座ぶとんに座り、左舷側壁に背をもたれかけた姿勢で1人で船橋当直に当たって進行中、23時42分ごろ落石岬から3海里ばかり手前に達したころから次第に眠気を覚えるようになり、そのまま1人で当直を続けていると居眠りに陥るおそれがあったが、目的地に近くなったので何とか我慢できるものと思い、休息中の甲板員を昇橋させて2人当直とするなどして居眠り運航の防止措置をとらないで続航した。
翌29日00時02分A受審人は、落石岬灯台から133度1.3海里の地点に達したとき、船主から落石漁港に入航の予定を変更して花咲港に入航するよう電話で指示を受け、同時05分同灯台から118度1.1海里の地点で針路を自動操舵のまま花咲灯台のわずか右方を向く018度に転じて、依然座ぶとんに座ったまま進行し、落石漁港の沖合を航過して間もなく居眠りに陥った。
01時13分博春丸は、花咲港の防波堤入口に向けて転針しなければならない花咲港防波堤入口沖合の、花咲灯台から189度1.0海里の地点に達したが、A受審人が居眠りに陥ったまま転針が行われずに続航中、01時25分花咲灯台から048度400メートルの岩礁に乗り揚げた。
当時、天候は霧で風力1の南風が吹き、視程は約100メートルで、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、博春丸は離礁できず、波浪にもまれているうちに船体が損壊して全損となり、燃料のA重油が流出した。

(原因)
本件乗揚は、夜間、北海道落石岬南方沖合の漁場から花咲港に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、花咲港の浅礁に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、北海道落石岬南方沖合の漁場から花咲港に向けて1人で船橋当直に就いて航行中、連日の操業の疲れと風邪による体調不十分から眠気を覚えた場合、そのまま当直を続けると居眠りに陥るおそれがあったから、休息中の甲板員を昇橋させて2人当直として居眠り運航を防止する措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、目的地に近くなったので何とか我慢できるものと思い、休息中の甲板員を昇橋させて2人当直として居眠り運航を防止する措置をとらなかった職務上の過失により、眠気を覚えたまま座ぶとんに座って船橋当直を続けて居眠りに陥り、花咲港の浅礁に向首進行して乗り揚げを招き、船体を全損させ、燃料のA重油を流出させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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