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1999年(平成11年)

平成9年広審第120号
    件名
貨物船第七青龍丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年1月20日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

織戸孝治、杉崎忠志 黒岩貢
    理事官
川本豊

    受審人
A 職名:第七青龍丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首船底外板に破口を伴う凹損

    原因
眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年5月29日03時50分
広島湾北東部三ッ子島
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第七青龍丸
総トン数 499トン
全長 66.93メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第七青龍丸(以下「青龍丸」という。)は、専ら広島県内での海砂採取運搬に従事する砂利採取運搬船で、A受審人ほか3人が乗り組み、空倉のまま、船首1.4メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成9年5月29日02時40分ごろ広島港似島沖の錨地を発し、広島県音戸瀬戸を経由する予定で同県竹原港沖の海砂採取場所へ向かった。
ところで、A受審人は、船橋当直を似島沖錨地と音戸瀬戸の間を自らが行い、その他の時間帯を同受審人を除く他の乗組員が1時間毎の輪番制で行うこととしていた。また、A受審人は、前日22時30分ごろから当日02時30分ごろまで自宅で睡眠をとり、発航前に服用後睡眠を催す作用のある風邪薬を呑んでいた。
こうしてA受審人は、発航時から舵輪後方の椅子に腰を掛けて操舵操船に当たり、03時10分屋形石灯標から095度(真方位、以下同じ。)1,650メートルの地点で、針路を167度に定め、機関を全速力前進にかけ10.0ノットの対地速力で手動操舵により進行し、同時34分音戸灯台から331度4,100メートルの地点に至り針路を音戸北口灯浮標に向く145度に転じて続航中、風邪薬の催眠作用もあり眠気を催すようになった。しかしながら、A受審人は、もうすぐ当直交代でもあり、よもや居眠りることはあるまいと思い、船橋後部のソファーで休息中の一等航海士を起こして当直を交代するなど居眠り運航の防止措置をとることなく、そのまま当直を続けているうち、いつしか居眠りに陥ったので、その後青龍丸は、保針が為されず徐々に右転しながら進行し、03時50分音戸灯台から252度2,220メートルの三ッ子島の東岸に、原速力のまま230度を向首して乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力の北北風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
乗揚の結果、船首船底外板に破口を伴う凹損を生じ、来援したサルベージ船により引き降ろされ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、広島湾北東部を南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、三ッ子島の東岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、風邪薬を服用した後単独の船橋当直に当たって広島湾北東部を南下中、眠気を催した場合、このまま単独の当直を続けると居眠りに陥るおそれがあったから、船橋後部のソファーで休息中の一等航海士を起こして当直を交代するなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、よもや居眠りすることはあるまいと思い、前示の居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、三ッ子島の東岸に向首進行して乗揚を招き、船首船底外板に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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