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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年門審第46号
    件名
貨物船御影乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年2月19日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

畑中美秀、清水正男、西山烝一
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:御影船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:御影一等航海士 海技免状:二級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
球状船首船底部に破口を伴う凹損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Bの二級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年5月19日17時10分
備讃瀬戸二面島南西岸
2 船舶の要目
船種船名 貨物船御影
総トン数 499トン
全長 75.46メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,618キロワット
3 事実の経過
御影は、バウスラスターを備えた船尾船橋型貨物船で、専ら瀬戸内海でコンテナ輸送に従事し、A及びB両受審人ほか3人が乗り組み、コンテナ6個を積載し、船首2.0メートル船尾3,3メートルの喫水をもって、平成9年5月19日10時30分広島県広島港を発し、神戸港に向かった。
ところで、御影の船橋には、株式会社ミナト無線通信機製のMK110見張警告装置が取り付けられ、瀬戸内海のピストン輸送で単調になりがちな航海中の居眠りを防止するため、運航面での特別な配慮が払われていたが、特に昼間は、警告装置の点滅灯が点灯したのち、当直者がスイッチを切る操作を忘れることが多く、その度に鳴るベルの音がうるさいので、通常、電源を切ってしまうことが多かった。
A受審人は、広島港出港後も船橋に残って狭水道の操船指揮にあたり、来島海峡航路を通航したのち、15時00分ごろ担当の甲板長に航海当直を引き継いだが、広島港着岸中に見張警告装置の電源を切ったままにし、眠気を覚えたときは必ずこれを活用するよう、甲板長を通して各航海当直者に引き継ぐよう指示することなく降橋した。
B受審人は、15時40分備後灘航路第3号灯浮標に並び、高井神島灯台から310度(真方位、以下同じ。)1海里の地点に達したとき、昇橋して航海当直に入り、針路を073度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて12.7ノットの、対地速力で、舵輪の後方に備えられた椅子に腰掛けて見張りにあたりながら進行した。
16時28分B受審人は、備後灘航路第5号及び同第6号灯浮標の間で190トン型貨物船を追い越したのち、前日の日曜日の深夜まで飲んだ焼酎(しょうちゅう)が残り、荷役終了後の後片付け、出港部署作業などをこなし、昇橋する前に厨房(ちゅうぼう)で夕食を用意したことなどで疲労を覚え、うつらうつらと舟を漕(こ)ぎ始めたことに自分でも気づいたが、付近を航行する船舶の数が少なかったことに気が緩み、手元に置かれた見張警告装置の電源を入れてこれを活用するとか、自動操舵から手動操舵に切り換えるなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、椅子に腰掛けたまま見張りを続けているうち、いつしか居眠りに陥り、16時51分半備後灘航路第7号灯浮標を左舷正横に見て並航し、二面島と粟島の中間に向首する次の予定転針地点に達したが、これに気づかず続航中、御影は、17時10分二面島灯台から228度200メートルの同島南西岸の岩礁に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、視界は良好であった。
乗揚の結果、球状船首船底部に破口を伴う凹損を生じ、サルベージ業者の手で離礁されたのち、自力で神戸港まで航行し、修理された。

(原因)
本件乗揚は、備讃瀬戸において、居眠り運航の防止措置が不十分で、二面島南西岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは、船長が備寸けの見張警告装置を活用するよう航海当直者に指示しなかったことと、航海当直者が、同装置を活用せず、居眠りに陥ったこととによるものである。

(受審人の所為)
B受審人は、備讃瀬戸を単独で航海当直に従事中、眠気を覚えた場合、前夜の飲酒などの影響で疲労気味の状態にあったから、手元に置かれていた見張警告装置を活用するなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、付近を航行する船舶の数か少なかったことに気が緩み、椅子に腰掛けて自動操舵のまま見張りを続け、見張警告装置を活用するなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、二面島南西岸の岩礁に乗り揚げ、球状船首船底部に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項2号を適用して同人の二級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
A受審人が、瀬戸内海において航海当直を単独の当直者に任せる場合、居眠り運航を防止するため、備付けの見張警告装置を十分に活用するよう、各航海士に指示しなかったことは本件発生の原因となる。しかしながら、経験の十分な航海士が昼間に居眠り運航を引き起こした点に徴し、同人の職務上の過失とするまでもない。

よって主文のとおり裁決する。






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