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1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年10月4日06時30分 新潟県新潟港西区西海岸沖 2 船狛の要目 船種船名
引船新八千代丸 総トン数 75トン 登録長 23.51メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 735キロワット 3 事実の経過 新八千代丸は、起重機船の曳航に従事する鋼製引船で、A受審人ほか2人が乗り組み、新潟港西区西海岸浸食対策工事現場への起重機船曳航の目的で、船首1.4メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成9年10月4日05時20分新潟港西区万代島ふ顕岸壁を発し、起重機船を曳航して同工事現場のうち新潟港西区西突堤灯台(以下「西突提灯台」という。)から223度(真方位、以下同じ。)3,000メートルの地点で築造中の第二突提工事現場に向かった。 ところで、新潟港西区西海岸浸食対策工事は、同海岸を外洋波浪による欠壊から守るために、既存の離岸提(消波ブロック)から約400メートル沖の海中部に人工的に潜提や突堤を設けるもので、昭和62年度から実施され、すでに潜堤工事が済んで第二突堤の築造中であった。 潜堤は、西突堤灯台から225度2,400メートルの地点から幅80メートルで235度の方向に約750メートル及び約130メートル置いて約110メートルの両水域に築造されていた。そして、同潜堤沖側及び陸側に数個の浮樽を設置してその位置が明示されていた、また、潜堤の陸側で同灯台から221度2,500メートルの地点から既設第一突堤に平行してその西側約460メートルのところに第二突堤が築造中であり、更に同間隔でその西側に第三突堤の築造が計画されていた。 A受審人は、前日曳航打合せの際に見た工事図面により既設構築物の位置及び浮樽設置場所等の概略の位置を知って潜堤の沖側に至り、工事監督船の指示を受けて同潜堤南西端方を迂回したのち、その陸側に設けられた浮樽を結ぶ線を避険線にして舵行し、00時20分第二突堤西端工事現場に至った。 A受審人は、起重機船を切り離したのち、再び同日夕方作業終了後の同船を曳航して帰航するため、06時25分西突堤灯台から223度3,000メートルの地点にあたる第二突堤西端から南西方500メートルの第三突堤築造予定水域付近で投錨して待機するつもりで、機関を微速力前進にかけて6ノットの速力でその場で反転して船首を南西に向けたところ、付近一帯に多数の釣り船が点在していたので、これを避けながら予定投錨地点に向かった。ところが、釣り船の動静とその避航に気をとられ、前示浮樽により船位の確認を十分に行わなかったので、前示避険線を越え潜堤に向かって接近していることに気付かないまま進行中、06時30分少し前工事監督船から危険を知らせる合図に気付くとともに前路至近に潜堤を認め、急いで反転しようとして左舵一杯として回頭中、06時30分西突堤灯台から228度3,300メートルの地点において、船首が西を向いたとき、原速力のまま潜堤に乗り揚げた。 当時、天候は曇で風力2の南南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。 乗揚の結果、船底外板に凹損及び推進翼先端に曲損を生じたが、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、新潟港西区西海岸沖の浸食対策工事水域において、起重機船を同工事現場に曳航後、待機のため工事水域内を移動する際、船位の確認が不十分で、既設潜堤式離岸堤に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、新潟港西区西海岸沖の浸食対策工事水域において、起重機船を同工事現場に曳航したのち、待機のため投錨地点に向かって工事水域内を移動する場合、付近の既設潜堤式離岸堤に乗り揚げることのないよう、同堤の位置を示す数個の浮樽を結んだ線を避険線に利用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、同水域内を行う多数の釣り船の動静とその避航に気をとられ、浮樽を結んだ線を避険線に利用するなどして船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、既設潜堤式離岸堤に向かって接近していることに気付かないまま進行して、同潜堤式離岸堤への乗揚を招き、船底外板に凹損及び推進翼先端に曲損を生じさせるに至った。 |