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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成仙審第36号
    件名
漁船第十五大勝丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年1月19日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

供田仁男、安藤周二、今泉豊光
    理事官
上中拓治

    受審人
A 職名:第十五大勝丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
転覆し、のち廃船処分

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年10月16日23時10分
宮城県二股島
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十五大勝丸
総トン数 65トン
全長 31.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 440
3 事実の経過
第十五大勝丸(以下「大勝丸」という。)は、沖合底びき網漁業に従事する船首船橋型の鋼製漁船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか4人が乗り組み、たら漁の目的で、船首1.0メートル船尾4.3メートルの喫水をもって、平成9年10月16日01時00分宮城県女川港を発し、金華山南方沖合の漁場に向かった。
A受審人は、大勝丸が宮城県石巻港を基地として同港周辺の港で水揚げを行う日帰り操業を続け、操業中の操船を漁労長であるB指定海難関係人が行うので、漁場を発航して操業の後片付けを済ませてから入港を挟んで翌日の漁場到着までの往復航海中、自らが船橋当直に就いて同指定海難関係人を休息させることとしており、出港操船に引き続き同当直にあたった。
05時00分B指定海難関係人は、漁場に到着すると同時にA受審人から船橋当直を引き継いで操業を開始し、投網、曳網及び揚網を繰り返し行い、曳網中にはA受審人を含む乗組員に2ないし3時間の休息を与えて自らは休息をとらないまま、たら8トンを獲て操業を終え、19時50分金華山の南方32海里の漁場を発航して女川港に向け帰途に就いた。
B指定海難関係人は、操舵室後部の右舷側壁寄りに設置されたカラービデオプロッタ(以下「プロッタ」という。)の前面にいすを置き、右舷方を向いて腰掛け、プロッタ画面に映し出されるレーダー映像を見ながら、機関を前進にかけて11.9ノットの対地速力で自動操舵により北上し、しばしば他船を避航するに際しては、同室前部の操舵スタンドに左手を伸ばし、プロッタのジャイロレピータ指度に数度の誤差があったのでこれを加減した針路設定を行った。
一方、A受審人は、22時00分いつもであれば昇橋しているころであったものの、折から乗組員の1人が欠員であったので操業の後片付けがはかどらないまま当直交代の時機が遅れ、B指定海難関係人が長時間休息をとっていない状況では、これ以上同人が船橋当直を続けると疲労で居眠りに陥るおそれがあったが、漁労長から当直交替の指示が適宜出されるものと思い、後片付けを中断して昇橋のうえ当直交替を申し出ることなく、漁網の修理作業に従事した。
22時37分B指定海難関係人は、金華山灯台から038度(真方位、以下同じ。)2.0海里の地点に至り、金華山の大函埼を左舷側1海里で並航したとき、早崎水道への転針地点となる、同水道南南東方2.5海里の地点に向けて針路を330度に定め、同じ速力で進行した。
定針したころ、B指定海難関係人は、05時に操業を開始してから一睡もしないで就労し、平素であれば既に休息中の時間帯でもあるうえ乗組員の補充についてあれこれ考えて、肉体的にも精神的にもかなりの疲労を感じ、立って見張りを行うのが大儀で、そのまま船橋当直を続けると居眠りに陥るおそれがあったが、人手が足りないことから、A受審人を呼んで同当直を交替せず、同人の昇橋を待つうち時折半睡状態となった。
22時58分B指定海難関係人は、早埼灯台から147度2.5海里の、早崎水道への転針地点に達し、プロッタ画面に映し出されたレーダー映像の同水道中央部にカーソルを当ててそのジャイロレピータ指度を読み取ったものの、薄れた意識の中で誤差を加減して針路を設定することまで気が及ばず、自動操舵の針路設定のつまみを力ーソル指度どおりの340度に合わせたところ、船首が早崎水道の中央部を通航する針路よりも5度右に偏して二股島に向かうこととなったが、これに気付かないまま、間もなく居眠りに陥った。
23時10分わずか前B指定海難関係人は、波の音で目を覚まし、船首至近に直った二股島の島影を認めたもののどうすることもできず、23時10分早埼灯台から075度1,050メートルの地点において、大勝丸は、原針路、原速力のまま、同島南岸の岩礁に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の南南西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
A受審人は、操業の後片付けを済ませ、昇橋に先立って食堂で食事中、衝撃を感じて乗り揚げたことを知り、船体が左方に大きく傾斜して甲板下の機関室内に浸水したので、船首部から係船索を垂らし、同索を伝って乗組員と共に陸上に避難した。
その結果、大勝丸は、前示乗揚地点で転覆し、のち廃船処分された。

(原因)
本件乗揚は、二股島南方沖合を北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、当直交替が適切に行われず、休息不足で疲労している船橋当直者が居眠りに陥り、同島南端に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人等の所為)
A受審人は、夜間、金華山南方沖合の底びき網漁場から帰途に就き、操業の後片付けののちに船橋当直を予定していた場合、平素よりも当直交替の時機が遅れたから、長時間休息をとらずに当直中の漁労長が疲労で居眠りに陥らないよう、後片付けを中断して昇橋のうえ当直交替を申し出るべき注意義務があった。しかし、同人は、漁労長から当直交替の指示が適宜出されるものと思い、後片付けを中断して昇橋のうえ当直交替を申し出なかった職務上の過失により、当直中の漁労長が居眠りに陥り、二股島に向首進行して同島南岸の岩礁に乗り揚げ、船体は転覆して、のち全損処理されるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人が、夜間,金華山南方沖合の底びき網漁場から帰途に就き、船長が操業の後片付けを済ませるまで船橋当直中、漁場で長時間一睡もしないで就労してかなりの疲労を感じたうえ船長の昇橋が平素よりも遅れていた際、船長を呼んで当直交替に行わなかったことは、本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては、その後同人が居眠り運航の防止に努めている点に徴し、勧告しない。

よって主文のとおり裁決する。






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