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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年広審第28号
    件名
貨物船明成丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年9月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

横須賀勇一、杉崎忠志、織戸孝治
    理事官
前久保勝己

    受審人
A 職名:明成丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
B 職名:明成丸二等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首船底部に凹損及び擦過傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、狭水道通過に際し、船長に報告が行われず、船位の確認が不十分のまま進行したことによって発生したものである。
受審人Bの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年2月5日03時15分
来島海峡小島
2 船舶の要目
船種船名 貨物船明成丸
総トン数 499トン
全長 64.81メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 956キロワット
3 事実の経過
明成丸は、船尾船橋型の油タンカー兼液体化学薬品ばら積船で、A受審人及びB受審人ほか4人が乗り組み、ベンゼン1,000トンを載せ、船首3.5メートル船尾4.5メートルの喫水をもって、平成10年2月4日15時20分大阪港を発し、山口県宇部港に向かった。
A受審人は、船橋当直を単独の4時間3直制とし、毎0時から同4時までの時間帯をB受審人、同4時から同8時までの時間帯を一等航海士に定め、自らはその他の時間帯の当直に従事するとともに出入港操船に当たるほか、当直航海士に対しては、平素から来島海峡航路等の狭水道に近づいたときは知らせるよう指示を与え、同航海士からの報告を受けて、自ら狭水道操船の指揮に当たることにしていた。
A受審人は、出港操船後一旦降橋し、同日19時45分船橋当直に就いて備讃瀬戸北航路を西航し、23時45分ごろ同航路第3号灯浮標を航過したころB受審人に来島海峡通峡の予定時刻及び潮流模様を伝え、同当直を交代して自室で休息した。
B受審人は、船橋当直を引き継ぎ、レーダー2台をスタンバイ状態として、備後灘、燧灘を海図記載の推薦航路に沿って西行し、翌5日02時43分来島海峡航路東口へ入航したものの、同航路を幾度か通航した経験があったことから、1人でも何とか通峡できると思い、A受審人に来島海峡に近づいたことを報告せず、そのころ、レーダーを作動させ、来島長瀬ノ鼻潮流信号所の南流5ノット表示を確認して西水道に向けて同航路内を航行した。
B受審人は、03時02分来島白石灯標から102度(真方位、以下同じ。)750メートルの地点に達したとき、針路を340度に定めて手動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、折からの潮流に抗して左方へ3度圧流されて5.7ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で進行した。
03時06分B受審人は、来島白石灯標から039度700メートルの地点に達したとき、水路の中央に寄せるつもりで針路を325度に転じたところ、潮流により左方に13度圧流されて6.1ノットの速力で続航するようになったが、西水道出口の目標となる小島東灯標の灯火を探すことにのみ気を奪われ、これを目安に航行しさえすれば無難に航過できると思い、レーダーを有効に活用するなどして船位の確認を十分に行うことなく進行中、同灯標の暗弧に入り、同時12分航路を外れて小島南西岸に向首していることに気付かず続航し、同時15分少し前間近に迫った小島の島影を認めて危険を感じ、左舵一杯、機関を全速力後進としたが効なく、明成丸は、03時15分来島中磯灯標から072度200メートルの小島南西岸に船首270度、2.0ノットの速力で乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の南南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で西水道には約4ノットの南南東流があった。
A受審人は、報告を受けて昇橋し、事後の処置に当たった。
乗揚の結果、船首船底部に凹損及び擦過傷を生じ、タグボートの来援を得て離礁し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、来島海峡航路西水道を北航する際、船長に報告が行われず、船位の確認が不十分で、小島南西岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
B受審人は、夜間、来島海峡航路西水道を北航する場合、小島南西岸に乗り揚げることのないよう、レーダーを有効に活用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、西水道出口の小島東灯標の灯火を探すことにのみ気を奪われ、これを目安に航行しさえすれば、無難に航過できると思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、小島南西岸に向首進行して乗揚を招き、船首船底部に凹損及び擦過傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

よって主文のとおり裁決する。






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