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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年4月12日00時25分 淡路島北西岸 2 船舶の要目 船種船名
貨物船せいわ 総トン数 499トン 全長 73.50メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 735キロワット 3 事実の経過 せいわは、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか3人が乗り組み、瀬戸内海各港と京浜港との間において鋼材や石材などの輸送に従事していたところ、平成10年4月10日07時00分兵庫県姫路港飾磨区第1区の山陽特殊製鋼株式会社専用岸壁に着岸し、08時30分から17時00分まで及び翌11日07時00分から19時40分までの間に鋼材約1,374トンを載せ、船首3.9メートル船尾4.4メートルの喫水をもって、22時30分同岸壁を発し、京浜港川崎区に向かった。 22時50分ごろA受審人は、姫路港港界線付近において、発航操船を終えた船長から引き継ぎ、同船長との単独6時間交替の船橋当直に就き、間もなく自動操舵に切り替え、立った姿勢で見張りに当たりながら播磨灘を明石海峡に向けて東行した。 ところで、A受審人は、姫路港において、業者が行う鋼材の荷役中は、積付け状態を確認するため、時々甲板に出て船倉の見回りを行うものの適宜休憩することができ、また、出港前夜は荷役がなかったので、船内で十分休息をとって発航したものであったが、平素、船長から当直中に眠気を催したときには知らせるよう指導されていた。 23時14分A受審人は、上島灯台から074度(真方位、以下同じ。)0.8海里の地点で、針路を120度に定め、引き続き機関を10.0ノットの全速力前進にかけ、折から東方に流れる潮流に乗じ11.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。 23時42分半A受審人は、播磨灘北航路第10号灯浮標を右舷正横0.4海里に通過したとき、前路に明石海峡航路に向ける転針地点となる明石海峡航路西方灯浮標(以下「西方灯浮標」という。)を肉眼及びレーダーで確認し、このままだと西方灯浮標からやや離れてしまうことを知り、いつものようにその南方0.5海里に並航するよう、針路を115度に転じ、次第に強まる北東流により、3度左方に圧流されながら、11.5ノットの対地速力で続航した。 しばらくしてA受審人は、海上が平穏で視界もよく、付近に他船も見当たらなかったことから、操舵輪後方のいすに腰を下ろし、見張りに当たっていたところやがて眠気を催すようになり、このままでは明石海峡を間近にして居眠り運航となるおそれがあった。しかし、同人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置として船長に昇橋を求めて2人当直とすることなく、翌12日00時03分カンタマ南灯浮標と高蔵瀬東灯浮標との間を通過して間もなく居眠りに陥った。 こうしてA受審人は、00時17分西方灯浮標を左舷側0.2海里に並航したものの、居眠りしていたのでこのことに気付かず、淡路島北西岸に向首したまま進行中、00時25分江埼灯台から236度1.2海里の地点において、せいわは、陸岸から100メートル沖合の浅所に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。 当時、天候は晴で、風力1の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、付近には約1.5ノットの北東流があった。 船長は、自室で仮眠中、衝撃を感じて目覚め、直ちに昇橋して事後の措置に当たった。 乗揚の結果、船底外板に凹損を生じ、タグボート2隻の来援を得て離礁し、自力で神戸港に回航のうえ船底調査を受けてから目的地に向かい、その後国外に売船された。
(原因) 本件乗揚は、夜間、播磨灘を明石海峡に向けて東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、淡路島北西岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、単独の船橋当直に当たり、播磨灘を東行中、明石海峡を間近にして眠気を催した場合、このまま当直を続けると居眠り運航となるおそれがあったから、居眠り運航の防止措置として船長に昇橋を求めて2人当直とすべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、船長に昇橋を求めて2人当直としなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、淡路島北西岸に向首進行して乗り揚げ、船底外板に凹損を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |