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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年2月22日06時40分 瀬戸内海岡山水道 2 船舶の要目 船種船名
貨物船日の出丸 総トン数 185トン 全長 50.70メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 478キロワット 3 事実の経過 日の出丸は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか1人が乗り組み、鋼材約630トンを積載し、船首2.6メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、平成10年2月21日07時00分関門港を発し、岡山県岡山港に向かった。 A受審人は、その後クダコ水道を抜けて安芸灘を航行し、来島海峡航路の西水道を南下後、備讃瀬戸南航路を東行して井島水道を経由し、岡山水道に向け北上した。ところで、岡山水道は、西側の米崎と東側の鰈埼(かれいざき)との間を南口とする北西方に延びる水路幅約1,500メートルの水道で、南口から約2,900メートルのところで水路は西方に湾曲して、次第に可航幅が減少し、同湾曲部から西方約1,700メートルのところにあるツブシ礁灯標の西方海域は、南北に挟まれた5メートル等深線内側の幅約200メートルの水路が可航水域となっており、同灯標から256度(真方位、以下同じ。)1,800メートル及び241度1,250メートルのところには、それぞれ岡山第4号、第3号の両灯浮標が設置され、同水路を西行する船舶は、その両側の水深が急浅となっていたことから、これらの灯浮標を目標に、同水路内を航行することになっており、A受審人もこのことを知っていた。 A受審人は、翌22日06時30分ツブシ礁灯標から078度550メートルの地点に達したとき、針路を253度に定めて手動操舵とし、入航に備えて機関を4.5ノットの半速力前進に減じて進行した。 06時34分A受審人は、ツブシ礁灯標から180度30メートルの地点に達したとき、薄明時でこれら灯浮標の灯光が識別しにくかったことからレーダーを使用し、同画面上で、前路に数隻の漁船の点在する映像に紛れて灯浮標が存在していたが、この内の漁船の映像を、岡山第3号灯浮標のものと判断し、これを目標に258度に転針し、灯浮標伝いに続航しさえすれば同水路内を無難に航行できるものと思い、他の陸標からの方位、距離によって、船位の確認を十分に行うことなく進行した。 A受審人は、その後、同水路をわずか北側に外れて航行していたが、このことに気付かず続航中、日の出丸は、06時40分ツブシ礁灯標から256度800メートルの地点において、水深2.5メートル、底質が泥の浅所に浅水影響を伴って乗り揚げ、そのまま擦過した。 当時、天候は曇で風力4の南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、潮位は約1.3メートルであった。 その結果、日の出丸は、右舷側ビルジキール及び推進器翼4枚に曲損を生じたがのち、修理された。
(原因) 本件乗揚は、薄明時、岡山水道において、ツブシ礁灯標の南側水域を西行する際、船位の確認が不十分で、水路北側の浅所に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、薄明時、岡山水道において、ツブシ礁灯標の西方海域をレーダー映像で灯浮標を目標に西行する場合、灯浮標周辺に点在する漁船の映像を灯浮標と取り違えることがあったから、他の陸標からの方位、距離を測定するなど船位を十分に確認して進行すべき注意義務があった。しかるに同人は、単に灯浮標伝いに続航しさえすれば同水路内を無難に航行できるものと思い、船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、水路を外れて浅所に向首進行して乗揚を招き、日の出丸の右舷側ビルジキール及び推進器翼に曲損を生じさせるに至った。 |